【8月12日 AFP】ブラジルで女性弁護士が自宅アパートの4階から夫に突き落とされ死亡したとみられる事件が発生し、国内で女性への暴力の増加に対する懸念が高まっている。事件があった南部パラナ(Parana)州の州都クリチバ(Curitiba)では11日、地元の弁護士会の呼び掛けで追悼・抗議集会が行われ、市民ら数百人が参加した。

 死亡したタチアニ・スピッツネル(Tatiane Spitzner)さんは先月22日、パラナ州グアラプアバ(Guarapuava)市内にある自宅アパートの4階から転落。スピッツネルさんに暴力を振るい逃げられないようにし、エレベーター内に押し込んだ後に窓から投げ落としたとして夫が拘束された。

 弁護士会がフェイスブック(Facebook)に投稿した動画には、デモの参加者たちが白いシャツ姿でクリチバ市内を行進後、白い風船を一斉に空に飛ばす様子が捉えられていた。ニュースサイトG1によるとデモにはスピッツネルさんの父親ジョルジ・スピッツネル(Jorge Spitzner)さんも参加し、性別に関するヘイトクライム(憎悪犯罪)が「私たちの国ではびこっている」と訴えた。

 夫の弁護団は無実を主張しており、G1は10日、夫が事情聴取でスピッツネルさんが自発的に窓から飛び降りたと供述していると報道。また、供述書によると夫は「何が起きたか覚えていない」と主張しているという。

 ただ、夫がスピッツネルさんを繰り返し殴ったり蹴ったりする様子は監視カメラに捉えられており、今月に入ってその映像がテレビで放送されると全国から非難の声が上がった。また活動家たちはこの衝撃的な映像について、家庭内暴力や女性が犠牲となる殺人事件が国内にまん延していることを示すものだと指摘している。

 非営利団体「ブラジル公安フォーラム(Brazilian Forum for Public Security)」が今週発表した年次報告書によると、昨年女性が犠牲となった殺人事件の件数は前年比6%増。これらの事件には女性を意図的に狙った通称「フェミサイド(女性殺し)」の犠牲者1133人が含まれており、さらに昨年のレイプ発生件数は前年比8%余り増の6万18件だった。(c)AFP