■積極的な導入

 中国は顔認証の最先端を行っている。交通違反をした人や信号無視や無理な横断をする「恥ずべき」歩行者に罰金を科すのに使われているほか、少なくとも1人の犯罪容疑者の逮捕にも活用された。

 ジョージタウン大の2016年の論文主著者であるクレア・ガービー(Clare Garvie)氏は、米国内では過去2年の間に国境警備や少なくとも1カ所の国際空港など、「顔認証がさらに広く積極的に利用されている」と指摘した。

 米アマゾン(Amazon)が顔認証ソフトウエア「レコグニション(Rekognition)」を警察に提供し始めたというニュースが伝えられると、従業員や活動家から、アマゾンは警察活動とは距離を置くべきだと非難の声が上がった。

 アマゾンの他にも多数のIT企業が顔認証に関わっている。例えば、マイクロソフト(Microsoft)の顔認証は、米国の国境警備に利用されている。また、メリーランド州の顔認証システムには、日本のNECとドイツのコグニテック(Cognitec)が開発したシステムが採用された。

 アマゾンは監視を行ったり、警察にデータを渡したりはしていないと主張している。また、同社の顔認証システムは行方不明の子どもの捜査や人身売買の防止に役立つとも主張している。

■安全対策の必要性

 マイクロソフトは先月、肌の色や性別の識別について、顔認証技術を大幅に改善したと発表した。一方、米IMBは、顔認証に対する偏見を取り除く目的で大規模な研究を開始したと明らかにした。

 人権擁護団体は、顔認証システムの精度が改善されることは歓迎するが、政府は安全対策を整備すべきだと訴えている。

 電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation)の弁護士、ジェニファー・リンチ(Jennifer Lynch)氏は、警察による監視活動は影響が大きいと指摘する。「認証が正確ではない場合、罪を犯していないのに巻き込まれる人が出てくる可能性がある。顔認証システムによって犯人だとされた人自身が、自分はその人物ではないと証明しなければいけなくなる」と、リンチ氏は今年初めに出した報告書で述べた。

 リンチ氏は顔認証システム特有のデータの乱用や誤使用のリスクも存在すると指摘する。なぜなら「私たちは自分の顔を変えられない」からだ。(c)AFP/ Rob Lever