【7月4日 東方新報】中国の富裕層にとって、「国外治療」はまさしく生活の一部になっている。ある機関の大まかな統計によると、2017年に中国で治療目的で国外へ渡航した人の数は60万人を超えており、うち80%ががん患者だとされている。

 国外であればより良い治療や待遇を受けられると考えている人が多いが、現実はそうではないようだ。最近の報道によると、湖南省(Hunan)で国外治療に関連した詐欺事件が摘発されており、被害者は全国で1700人以上に上る。大金をつぎ込むなど、国外治療の現実が浮き彫りになっている。

■国外治療に行くかどうか、病気の種類による

 現在、世界各国のトップレベルの病院ではたくさんの中国人患者を見かける。背景には、中国と先進国との医療レベルの格差や、中国富裕層の台頭があると言われている。

 中国工程院(Chinese Academy of Engineering)の孫燕(Sun Yan)院士は、「がんになったら治療のために国外へ渡航するというのは、誤った認識だ」と指摘する。「症例の多いがん治療の水準は、米国とさほど遜色はない。食道がん、鼻咽頭がん、肝臓がんなど、欧米で症例の比較少ないがんは、中国の医師の臨床経験が国外医師よりも豊富な場合がある」と話す。

■「生きる道を求める」その背後にあるわな

 近年、ピークを迎えている国外治療。多くの人たちに「生きる希望」を与えているが、同時にこれまで見えていなかった問題も徐々に顕在化し始めてている。

 国外治療には、言葉の壁や得られる情報の隔たりがさらに大きくなり、仲介業者の橋渡しを必要とする人は多い。しかし、どういった資格の人が適しているのか、トラブルが起きた場合、こうした仲介業者がどのような法的権利や規則によって保証してくれるのかなど、不明瞭な部分がいまだに多い。