■「胸が痛む」

 物事は順調に進んでいた。生産コストが低いということは、外国企業の5分の1の価格で販売できることを意味しており、売り上げは毎年倍増していった。そしてついに、カタールにある複数の病院と大規模な契約を結ぶことができた。

 しかしその後、米国でトランプ政権が誕生。トランプ氏は、イランとの核合意からの米国の離脱を表明する以前から、イランに対する制裁の復活を常にちらつかせ、対イラン貿易に萎縮効果を生じさせていた。ステンレス鋼をはじめとする極めて重要な原材料の輸入は、すぐに困難になった。

「原材料の入手は元々困難な状態でしたが、今では不可能になってしまいました。工場を閉鎖するか、はるかに高い価格で生産を継続するかのどちらかしかありません」とレイラさん。「うちでは先月、4、5人の従業員を解雇しなければなりませんでした。給与を払えなくなったためです。胸が痛みます」

 レイラさんは5月8日、トランプ氏がイランへの制裁再開について行った演説を嫌悪と憤怒の入り混じった思いで見ていたが、とりわけトランプ氏が、イラン国民の味方としてイラン政府に立ち向かうと主張した際には、感情が爆発した。

「あれには本当に腹が立ちました。こうした制裁は、政府ではなく国民に影響を与えるものです。これでは障害者や高齢者にこれまで通り商品を供給できません。私たちは、欧州並みの品質の製品を手頃な価格で提供しているんです。今後も続けられるかどうか、私には分かりません」

 だがアンナさんは対照的に、くじけることなく前を向く。「イランには私たちの製品を使ってくれる高齢者や怪我をした人たちが1000万人いる。トランプ氏がいようがいまいが、私たちのビジネスはある」「イランで投資家であることはジェットコースターのようなもので、1歩進んでは3歩下がるといった感じで波が激しいけれど、ここは大きなチャンスを秘めた素晴らしい国です」

(c)AFP/Eric Randolph