【6月5日 AFP】米ケンタッキー州の高校の卒業式で男子生徒が行ったスピーチが、相手は間違っていると主張し合う現在の政治情勢を象徴しているとして話題を呼んでいる。

 ベン・ボーリング(Ben Bowling)さん(18)は石炭産業のある小さな町パインビル(Pineville)のベル・カウンティ―・ハイスクール(Bell County High School)で2日、卒業生総代としてスピーチを行った。スピーチで「ただ関わるだけではだめだ。テーブルの自分の席のために戦え。さらにいいことは、テーブルの上座を求めて戦うことだ」という一文を引用し、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の言葉だと伝えた。

 共和党支持者が大半を占めるこの地区で、聴衆が大きな歓声を上げ始めた瞬間、ボーリングさんは手を挙げて「冗談、冗談です。今のはバラク・オバマ(Barack Obama)のものです」と述べた。

 すると歓声は突然やみ、含み笑いがまばらに飛び交い、軽いブーイングが一つ聞こえた。

 オンライン上に投稿されたスピーチの映像は4日、他者の言うことやなすことが全て気に入らないとする政治状況を象徴しているとしてメディアの注目を浴びた。

 同州ルイビル(Louisville)の地元紙クーリエジャーナル(Courier-Journal)のインタビューに応じたボーリングさんは、スピーチでは気軽なジョークのつもりで冗談だと明かしたのだと語った。

 ボーリングさんはオバマ氏の言葉を持ち出した意図について「とても良い引用だと思っただけ」と述べ、「多くの人は(オバマ氏の引用を)使ったら気に食わないだろうから、トランプ氏の名前を使った。何しろここは南東部のケンタッキーだから」と語った。

 オバマ氏の言葉は2012年にニューヨークの大学で行われたスピーチで発せられたもの。同氏はそこで「あなたたちは女性たちが自分の運命のみならず、この国と世界の運命を決めるという世紀を形作る準備ができている」と述べ、「私の一番初めの助言はこれだ、ただ関わるだけではだめだ。テーブルの自分の席のために戦え。さらにいいことは、テーブルの上座を求めて戦うことだ」と語り掛けた。(c)AFP