■雨期だけで英国の年間降水量の約3倍に?

 難民キャンプの仮設住宅に、雨期の3か月間で降り注ぐことが予想される降水量は2500ミリ以上。英国の年間降水量の約3倍に相当する量だ。

 バングラデシュ沿岸部ではこの数十年の間にサイクロンで数万人以上が死亡し、洪水と土砂災害ではさらに多くの死者が出ている。コックスバザールもここ3年連続でサイクロンに見舞われ、すでに壊滅的な被害を経験している。

 これから始まるモンスーンは、このままでは、どこにも逃げ場のないロヒンギャ難民を直撃する。彼らは高台にも、サイクロンから身を守るためのシェルターにも避難できない。

 バングラデシュ当局は、難民キャンプの仮設住宅に丈夫な建材を使用することを制限してきた。政府としてはロヒンギャをバングラデシュ国内に長期間滞在させるのではなく、ミャンマーに帰還させたいためだ。

■約100万人に食料や物資が届かなくなる恐れが

 迫害を逃れて来たロヒンギャ難民は、再び逃避行を余儀なくされる事態を恐れている。

 ロヒンギャのイスラム教指導者、ムハンマド・ユスフ(Muhammad Yusuf)師はAFPにこう話した。「誰もが不安がっている。今の住まいが破壊されたら、私たちはどこに行くことになるのだろうかと」

 支援団体は、サイクロンや壊滅的な嵐が到来すれば、難民キャンプへの接近は1週間は遮断され、食料や物資が届かなくなる恐れがあると懸念している。

 国連(UN)世界食糧計画(WFP)のピーター・ゲスト(Peter Guest)緊急調整官は、車両が道路を通行できなくなった場合に備え、難民キャンプまで徒歩で食料を運搬するスタッフを多数確保していることを明らかにした。

 ロヒンギャがモンスーン災害で住む場所を失い、飢えに苦しんだとしても、逃げられる場所はどこにもない。難民キャンプを取り囲むように軍の検問所が設置され、キャンプから離れることは禁じられているからだ。

 ロヒンギャ難民の一人、ディル・モハンマドさん(60)は言った。「自分たちにできることは何もない。アラーの神が守ってくれなければ、私たちは死んでしまうでしょう」

(c)AFP/Nick Perry/Redwan Ahmed