■「でっち上げ」

 一方、アサド政権とそれに同盟するロシア政府は双方ともに、いかなる化学兵器の使用も「でっち上げ」だとして否定している。政権側は10日、国際機関・化学兵器禁止機関(OPCW)の査察団に「必要な支援を行う用意がある」として受け入れを表明しており、OPCWもまもなく一行を派遣するとみられている。

 欧米諸国は、化学兵器の使用は「越えてはならない一線」であり、厳しい対抗措置を取り得るとしてアサド政権に何度も警告してきた。だが、その対抗措置はこれまでのところ限定的だとイタニ氏は指摘する。

 昨年4月には、後に国連(UN)の査察団がアサド政権の仕業だと断定した毒ガス攻撃に対し、米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領がシリア中部の軍事空港へミサイル数発を撃ち込んだ。

 しかし、アサド政権に長期的な打撃はほとんどなかった。そして、その後も度々毒ガスなどの使用が疑われ、その都度非難されているにもかかわらず、アサド政権側に対する国際的な軍事対抗措置は発動されていない。

 こうした動きについてイタニ氏は、化学兵器の使用を計画するどの政権軍にとっても「想定される最悪なケースは米国による限定的な攻撃程度でそれ以上の支障はない」と捉えることができ、これまでの欧米諸国の対応では、アサド大統領に「最後は彼がシリア(全土)を奪還し、政治的に生き残るができる」と告げているようなものだ、と指摘した。(c)AFP/Alice HACKMAN