【4月2日 AFP】フランスの文学理論家ジュリア・クリステヴァ(Julia Kristeva)氏が、出身国ブルガリアが共産主義だった時代に同国の諜報(ちょうほう)機関に短期間協力していたことが、このほど公開された機密資料から明らかになった。ただ、同氏が提供した情報はあまり役に立たなかったという。

 クリステヴァ氏は1966年にフランスに移住し、精神分析学や文学理論について広範に論じてきた。

 共産主義時代の機密資料の開示を担うブルガリアの委員会は先月30日、クリステヴァ氏に関する160ページ以上にわたる資料を公開。主にクリステヴァ氏の学術活動や政治活動の詳細が記されているが、同氏が諜報機関に提供したとされる情報についても言及している。

 1984年11月10日付の報告書は「1970年の終わり頃、彼女(クリステヴァ氏)は在外ブルガリア国民や、パレスチナを中心とした進歩的なアラブ組織、毛沢東(Mao Zedong)主義の活動家についての情報を提供し始めた」と説明。「彼女が提供した情報は特に興味を引くものではなく、忙しいと言って会議に出ないなど規律にも欠ける」と記している。

 クリステヴァ氏が毛沢東思想を取り入れたことを受け、「1973年初めに(諜報機関から)協力関係をほごにされた」とも書かれてある。

 クリステヴァ氏のコードネームは「サビナ(Sabina)」だったという。

 クリステヴァ氏がブルガリアの諜報機関に協力していたとの疑惑は先月末、公表に先立ち取り沙汰されていたが、同氏は「ばかげた誤り」と否定。疑惑を報じたメディアに対して法的手段も辞さないと述べている。