【3月27日 AFP】そびえ立つような巨大な肉体と、それに匹敵する巨大な自負心を併せ持つズラタン・イブラヒモビッチ(Zlatan Ibrahimovic)だが、今の彼はそのプライドが傷つく事態に直面している。クラブレベルでは大幅な減俸を受け入れてロサンゼルス・ギャラクシー(Los Angeles Galaxy)へ移籍し、代表については復帰希望を口にしたものの、スウェーデン代表チームは関心を持っていない。

 イブラヒモビッチは前週の23日、これまで多くのベテランスター選手がやってきたように、世界最高峰の欧州サッカーから米メジャーリーグサッカー(MLS)へ戦いの舞台を移し、マンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)からギャラクシーへ移籍した。

 さらにイブラヒモビッチは3月初頭、「代表チームが恋しい」と復帰を希望するコメントを発し、自信たっぷりに「俺はやりたいことは実現する。今俺がやりたいのは、自分が良いパフォーマンスを見せられると感じることだ」と話した。現在36歳で、代表の主将を務めたこともあるイブラヒモビッチは、2016年の欧州選手権(UEFA Euro 2016)を最後に代表を引退している。

 しかし、スウェーデンのヤンネ・アンデション(Janne Andersson)代表監督は、明らかにイブラヒモビッチの復帰を熱望するという雰囲気ではない。今回の親善試合にも「ズラタン」を招集しなかった監督は「私としては何も変わらない。ズラタンが私に電話をかけてくるなら大歓迎だ」と話し、主導権はイブラヒモビッチの側にはないとほのめかした。

 アンデション監督は、イブラヒモビッチが去った後の2016年8月に代表の指揮官に就任し、その後は19試合を戦って11勝4敗4分けの成績を残している。W杯ロシア大会(2018 World Cup)の欧州予選では、フランスやオランダが同居する厳しいグループを生き残ってプレーオフへ進むと、イタリアを退けて本大会出場を決め、イタリアを60年ぶりとなる予選敗退に追い込んだ。

 代表戦116試合で62ゴールを挙げている、スウェーデン史上最高の点取り屋の代表復帰については、国内の意見も真っ二つに割れている。イブラヒモビッチが青と黄色の代表のユニホームをまとっているところを見られるだけで幸せだという人もいれば、イブラヒモビッチ抜きで予選を突破した今のチームに、彼の居場所はないと主張する人もいる。

 スウェーデンの国営放送スウェーデン・テレビ(SVT)で解説者を務めるダニエル・ナンスコーグ(Daniel Nannskog)は、イブラヒモビッチの復帰が代表にとってメリットがあるかはわからないと話している。

 今の代表には、イブラヒモビッチのような突出したクオリティーを持つ選手はいないが、その一方でチームとして団結力を武器に戦いながら成長してきた。ナンスコーグ氏はそのことを指摘し「問題は、今の代表は仲間のために戦うチームで、それで素晴らしい予選を過ごしてきたということだ」と話している。

 イブラヒモビッチはアヤックス(Ajax)、インテル(Inter Milan)、FCバルセロナ(FC Barcelona)、ACミラン(AC Milan)、パリ・サンジェルマン(Paris Saint-GermainPSG)、そしてマンチェスター・ユナイテッドで30個以上のタイトルを獲得したが、2016-17シーズンの終盤に膝の靱帯(じんたい)を断裂する大けがをしてシーズン絶望になると、復帰後も安定した出場機会は得られず、最終的には途中退団を決意した。

 ギャラクシー加入に際し、イブラヒモビッチは一面に「親愛なるロサンゼルス、ようこそ俺へ」とだけ書かれたメッセージを地元紙ロサンゼルス・タイムズ(Los Angels Times)に掲載してLA上陸を発表したが、新チームでの年俸は150万ドル(約1億5700万円)前後とユナイテッド時代の推定1900万ポンド(約28億円)と比べればはした金にすぎない。

 2016年に「米国を征服した俺の姿が見える。欧州でやったのと同じようにね」と話していたイブラヒモビッチは、23日にスウェーデン通信(TT)に対し、こう話している。

「欧州でプレーした後、つまり世界最高のチームで世界最高の選手とプレーした後は、米国に行きたいと思っていた。米国の人たちに俺のプレーを気に入ってもらいたいし、勝ちたい。そのためにギャラクシーを選んだ」 (c)AFP/Pia OHLIN