【3月5日 AFP】(更新)米ハリウッドで4日に開催された第90回アカデミー賞(Academy Awards)授賞式では、13部門でノミネートされていたファンタジーロマンス映画『シェイプ・オブ・ウォーター(The Shape of Water)』が作品賞と監督賞、美術賞、作曲賞の4部門を受賞した。

『シェイプ・オブ・ウォーター』で監督賞を初受賞したギレルモ・デル・トロ(Guillermo del Toro)氏は、ステージに上がると感極まった様子で「私は移民です」と述べ、さまざまな国や文化の中で暮らす人々の「境界線を消し去る」映画の力をたたえた。また「ファンタジーを用いて今の現実世界で起きている出来事についての物語をつくろうと夢見ている人たちに言いたい。やればできる」とスピーチした。

 ここしばらくはセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)に揺れた米映画界だが、昨年に続いて2度目の司会を務めたジミー・キンメル(Jimmy Kimmel)氏は、授賞式の冒頭でさっそく大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン(Harvey Weinstein)氏の話題に触れ、「私たちはこれ以上、不品行を見逃していてはいけない。世界中が私たちを見ている。模範を示さなくては」と呼び掛けた。

『スリー・ビルボード(Three Billboards Outside Ebbing, Missouri)』で今年度の賞レースを総なめしてきたフランシス・マクドーマンド(Frances McDormand)は、『ファーゴ(Fargo)』以来、21年ぶりに2度目の主演女優賞を受賞。会場の女性候補者たちを立ち上がらせ、映画業界で多様性を反映した契約を要求する必要性について訴えた。

 セクハラ告発運動「#MeToo(私も)」やセクハラ撲滅キャンペーン「タイムズ・アップ(Time's Up)」が席巻した今年の賞レース。その最後を締めくくるアカデミー賞は、ハリウッドにとって女性をサポートする姿勢を見せるいいきっかけになるとの見方もあった。

『レディ・バード(Lady Bird)』で監督賞にノミネートされていたグレタ・ガーウィグ(Greta Gerwig)監督は、女性としてアカデミー史上5人目の候補となった。同作品は作品賞と脚本賞にもノミネートされていたが、どれも受賞を逃している。

 またアカデミー史上初の女性候補が選ばれていた撮影賞では、『マッドバウンド 哀しき友情(原題:Mudbound)』のレイチェル・モリソン(Rachel Morrison)氏が受賞を逃した。この部門で受賞したのは『ブレードランナー 2049(Blade Runner 2049)』のロジャー・ディーキンス(Roger Deakins)氏だった。14回目のノミネートで初の受賞となった。

 伝統的に前年の主演男優がプレゼンターを務める主演女優賞だが、今年はジェニファー・ローレンス(Jennifer Lawrence)とジョディ・フォスター(Jodie Foster)が発表を行った。去年の主演男優賞受賞者のケイシー・アフレック(Casey Affleck)は1月に辞退を発表していた。過去の性的スキャンダルで注目を集めたことがその理由とされている。

 昨年の授賞式では、作品賞の発表で受賞作品を取り違えるという前代未聞の大失態が起きた。問題の発表を行ったウォーレン・ベイティ(Warren Beatty)とフェイ・ダナウェイ(Faye Dunaway)だが、今年も同じく作品賞のプレゼンターとして登場した。サプライズの演出だったが、今年の発表では取り違いは起きなかった。