【3月1日 AFP】欧州連合(EU)は2月28日、英国のEU離脱(ブレグジット、Brexit)協定の草案を発表し、アイルランドと国境を接する英領北アイルランドがブレグジット後もEUの関税同盟に留まる可能性に言及した。テリーザ・メイ(Theresa May)英首相はEUが「憲法に基づく英国の統一性を脅かす」ことは決して容認できないと述べ、強く反発している。

 欧州委員会(European Commission)のミシェル・バルニエ(Michel Barnier)首席交渉官は、より良い解決策が見つからなかった場合の「安全策」として、EUの関税同盟・単一市場の加盟国であるアイルランドと北アイルランドが「完全な協力関係」を維持する可能性を離脱協定草案に盛り込んだと説明した。

 EU草案は、代案がなかった場合には「北アイルランドに関しては、EUと英国を含む共通規制地域」を設置し、「同地域内には国境を設けず、自由な物の移動と南北(アイルランド)の協力を保証するものとする」としている。

 アイルランドとEUは、1998年の北アイルランド包括和平合意「聖金曜日の合意(Good Friday Agreement)」を守るためとして、南北間に税関検査など厳しい国境管理(ハードボーダー)が必要となるような離脱協定は避けるよう求めていた。

 この草案についてバルニエ氏は、英国の主権を脅かすものではないと強調したが、英政府は北アイルランドと英本土との間に事実上の関税の壁を築く措置は受け入れられないと拒否。メイ首相は英議会で「草案の条文は、適用されればアイリッシュ海(Irish Sea)に関税上・規制上の国境が築かれ、英国の共同市場を揺るがし、憲法に基づく英国の統一性を脅かす。これに同意する英国の首相はいない」と述べた。(c)AFP