■数多くの命を救う

 今回の研究成果をまとめた論文の共同執筆者で、米ハーバード大医学部(Harvard Medical School)のジョバンニ・トラバーソ(Giovanni Traverso)氏は、この試験で「薬剤を持続放出する投薬方式は、薬を毎日服用する現行のHIV治療と同等かそれを上回る好成績を収めている」と語った。

 研究チームが行ったコンピューターモデルに基づく推算によると、この最新の薬剤送達システムによって今後20年間で20万~80万件の新規感染を防ぐことができる可能性があるとされた。ただ実際の運用に至るまでには、長い時間をかけてさらに多くの試験を霊長類や最終的には人で実施する必要がある。

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)によると、2016年には180万人が新たにHIVに感染。HIV感染者の数は3670万人だった。このうちの2000万人以上はARTを受けていた。

 HIVウイルスをめぐっては過去35年間に及ぶ研究が重ねられているが、感染への治癒法やワクチンはまだ実現されていない。1980年代初め以降で7000万人がHIVに感染し、約3500万人がHIVで命を落としている。(c)AFP/Mariëtte Le Roux