【11月27日 AFP】エジプト東部シナイ(Sinai)半島のモスク(イスラム礼拝所)が武装集団に襲撃され、305人が死亡した事件。生き残った若い導師(26)が26日、入院先の病院でインタビューに応じ、モスクに戻って終わらせられなかった説教を再開することを誓った。

「説教を始めてわずか2分後ほどのことでした。モスクの外で2回爆発音が聞こえ、次の瞬間、信者たちが恐怖で逃げ回っていました」

 ムハンマド・アブデルファタフ(Mohammed Abdel Fattah)師は24日、北シナイ(North Sinai)県にあるローダ(Rawda)モスクで金曜礼拝に臨んでいた。「それから男たちがモスクの中に入ってきて、まだ立っていた人たちに向けて発砲し始めたんです」

 ナイル川デルタ(Nile Delta)の町フサイニヤ(Al-Husayniya)の病院のベッドに横たわりながら、アブデルファタフ師は事故当時の状況を説明してくれた。

 ローダモスクには、イスラム教の神秘主義者スーフィー(Sufi)が頻繁に礼拝に訪れる。2年間、同モスクの導師を務めているアブデルファタフ師は、その日の説教のテーマは「人類の預言者ムハンマド」だったと話す。

 襲撃が始まったとき、アブデルファタフ師は高くなっている説教壇から落ち、虐殺から逃れようとする礼拝者に踏みつけられた。床に倒れた導師の上を人々がまたいで逃げ、その後、襲撃犯らに撃たれた人々の体が上に覆いかぶさり、同師は身動きできなくなった。そのため頭を上げて周りの様子を見ることはできなかったという。

 同モスクがスーフィーと関連があることから、襲撃はイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」によるものと見られている。ISは聖人をあがめるスーフィーを異端視している。

 アブデルファタフ師は、自分がスーフィーの共同体に属しているかは明かさなかった。どの派に属しているかとの問いには「神とその預言者に仕える者です」と答えた。

 アブデルファタフ師は打撲を負ったが、快方に向かっているように見えた。同師は、歩いてモスクに戻って、暴力的に中断させられた説教の続きをしたいと望んでいる。「体調が許せば、次の金曜には(ローダモスクに)戻り、説教を終わらせたい」 (c)AFP/Bassem Aboualabass