■ダイバーさながらの妙技

 モノ湖の化学成分は、通常なら容易にこの一般的な防御を打ち破るが、アルカリミギワバエは「普通のハエより毛深く、炭酸塩が豊富な水をはじくのに特に効果的なろう状物質で体と体毛が覆われている」と、米カリフォルニア工科大学(Caltech)の研究チームは論文で説明している。

 今回の研究では、モノ湖のハエを溶剤のヘキサンで洗うとろう状物質が分解され、ハエの気泡形成能力が消失することが分かった。また、ハエの足はかぎ爪状のつくりとなっているため、気泡の浮力でどこかに運ばれることなく水中の岩の上をはって進む助けになっているのだという。

 研究チームは、ハエの動きを分析するためにハイスピードカメラで撮影した映像を使用し、さまざまな種類の溶液の中にハエを浸してどのように反応するかを調べた。さらに、モノ湖のハエと他種のハエとの比較も行った。結果、同じ方法でアルカリ性の湖水から体を保護できるハエは他にいなかった。

 今後の研究では、アルカリミギワバエのろう状物質の人工的な合成が可能かどうかを確かめるために、その化学組成の分析が行われる可能性があるという。

 論文の共同執筆者で、Caltechのマイケル・ディッキンソン(Michael Dickinson)氏は「また、神経生物学的に非常に興味深い部分もある。ハエが意図的に水中をはい回るのは、とても信じられないほど奇妙なことなのだ」と指摘している。(c)AFP/Kerry SHERIDAN