【10月26日 Watches Press】オークションハウス「スキナー(Skinner)」は10月27日、米マサチューセッツ(Massachusetts)州のマールボロ(Marlborough)にあるオフィスで「クロック、ウオッチ&精密器具」オークション(オークション番号3035M)を開催する。

 カタログで注目に値するのは、ハミルトンの先代社長の時代のコレクションからの、ハミルトンの腕時計やケースに入っていないムーブメント60点だろう。しかし最も興味深いのは、ロット27の「Tornek-Rayville TR-900」というダイバーズウオッチだ。

 このステンレススチール製、防水仕様、耐磁性の腕時計は、双方向に回転するブラックのベゼルを備えており、1964年から1965年の間に米海軍のために製造された。1950年代の「ブランパン(BLANCPAIN)」のフィフティファゾムスをベースにしており、耐磁性に作り直された(アレン・トルネク(Allen Tornek)氏は、ブランパンブランドを所有していたレイヴィル(Rayville)の輸入者だった)。

 現在、文字盤の表示は全てピンクになっているが、元々はグリーンの夜行塗料を使用していた。6時の部分にある大きな円の下半分は、元はブルーだが水分が入るとピンクに変わる仕様だ。

 ケースバックには「MIL-W-22176」の刻印があり、軍の基準に沿った物であることを示している。「AEC license 6-5970-6」は米国原子力委員会(Atomic Energy CommissionAEC)のライセンスで、「DANGER 2 mc Pm 147 11/84 RADIOACTIVE MATERIAL」は文字盤に放射性物質が使われたことを示している。他の時計メーカーは夜行塗料をトリチウムからラジウムに変更したが、Tornek-Rayvilleでは初期の輝度のためにプロメチウム147を使っていた。しかし、半減期がわずか2年半ほどなので、すぐに文字が消えてしまったのだ。

 このダイバーズウオッチは1964年から1965年の間に、約1000本製造された。AECによる認可のため、この時計は役目を終えると米海軍によってAEDに返され廃棄された。現在ではおそらく、個人が所有する物として20点ほどしか残っていない。米国では非常に希少な腕時計となっている。

 推定価格は3万~5万ドル(約335万~560万円)。この時計よりもかなり状態の悪い物が2012年に「スキナー」のオークションに出品されたが、その時は推定価格90万~112万円の4倍となる3万6735ドル(約412万円)で落札された。

■関連情報
「スキナー」オンラインオークションカタログ<外部英語サイト>
「スキナー」オークションPDFカタログ<外部英語サイト>
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