【9月6日 AFP】今夏、合計3億8000万ユーロ(約490億円)を費やしてネイマール(Neymar da Silva Santos Junior)とキリアン・エムバペ(Kylian Mbappe)を獲得したフランス・リーグ1のパリ・サンジェルマン(Paris Saint-GermainPSG)。クラブの次の任務は、欧州サッカー連盟(UEFA)が定めるファイナンシャル・フェアプレー(FFP)を回避する道を模索することになる。

 UEFAは1日、2014年にもFFPに違反して処分を科されているPSGについて、莫大な支出を調査すると発表。これに対し、史上1位と2位の移籍金でネイマールとエムバペを獲得したPSGは「世界中での収入増、スポンサー収入、マーチャンダイズ、チケット収入、テレビ放映権、大会成績、夏と冬の国外ツアー」を通じ、「収益が20~40パーセント増加する」ことが見込まれるとの見解を示している。

 PSGがFFPに抵触しないためには、5億2000万ユーロ(約670億円)程度と推定されるクラブの現在の収益に1億500万ユーロ(約136億円)から2億1000万ユーロ(約272億円)前後を上積みする必要があるが、その方法はいくつかある。

■来年1月の人員整理

 FFPの規定では、各クラブは年間3000万ユーロ(約39億円)を超える損失を出してはならないと定められている。これを回避する方法としてわかりやすいのは、来年1月の冬の移籍市場で、チームの「デッドストック」を一掃することだ。今夏の補強により、すでにチームでは高い市場価値を持つ複数の選手が余剰戦力と化している。

 ウェブサイトの「Transfermarkt」は、ネイマールとエムバペが加入する前のPSGの陣容価値を5億2000万ユーロと見積もっている。その中でも、4200万ユーロ(約54億円)で加入したハビエル・パストレ(Javier Pastore)、同4000万ユーロ(約52億円)のルーカス・モウラ(Lucas Rodrigues Moura da Silva)、6300万ユーロ(約82億円)のアンヘル・ファビアン・ディ・マリア(Angel Fabian Di Maria)は、先発で起用されない可能性が高い。

 前線では、今後は基本的にネイマールとエムバペがエディンソン・カヴァーニ(Edinson Cavani)とトリオを組むとみられ、ここにユリアン・ドラクスラー(Julian Draxler)が控えていることを考えれば、PSGにとってパストレ、ルーカス、ディ・マリアらを放出して現金を捻出するのはたやすい。

■巨額のスポンサー契約

 PSGが史上最高額の2億2200万ユーロ(約288億円)を支払ってネイマールを獲得した最大の理由の一つが、ブラジル代表主将のマーケティング面での価値の高さだった。ナセル・アル・ケライフィ(Nasser Al-Khelaifi)会長は、ネイマールには4億5000万ユーロ(約580億円)の価値が「すぐに」生まれると話している。

 PSGは現在、ナイキ(Nike)とキットサプライヤー契約を、エミレーツ航空(Emirates Airlines)と年間推定4000万ユーロ(約52億円)の胸スポンサー契約を結んでいるが、クラブのスポンサー収入は、FCバルセロナ(FC Barcelona)やレアル・マドリード(Real Madrid)が得ているめまいがするような金額には遠く及ばない。

 たとえばバルセロナは、ナイキと少なくとも1億5000万ユーロ(約194億円)のキット提供契約を結んでおり、イングランドの名門マンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)は米自動車メーカーのシボレー(Chevrolet)と年間6700万(約87億円)ユーロの胸スポンサー契約を結んでいる。

 ネイマールを手に入れたPSGは当然、今よりもはるかに金銭面で魅力的なスポンサー契約の締結を狙うだろう。それが成功すれば、FFPに抵触する不安など一瞬で消え去る可能性もある。

■ピッチ上での成功

 カタール・スポーツ・インベストメンツ(Qatar Sports InvestmentsQSI)がPSGを買い取って以来熱望しているのが、欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League)制覇だ。これもFFPを回避する手段になり得る。欧州最高峰の大会の放映権料はかつてなく高騰しており、PSGが決勝に進出すれば、支払われる額は1億ユーロ(約130億円)を超える可能性もある。

 国内でも、ASモナコ(AS Monaco)からリーグ王者の座を取り戻せばその分だけ獲得賞金も増える上、ネイマールの参戦で、リーグ1の各国での放映権料がうなぎ上りになる可能性もある。

 フランスリーグ(LFP)の国外放映権は、2018-2024年までが年間わずか8000万ユーロ(約104億円)で販売されており、スペイン1部リーグの7億ユーロ(約907億円)、イングランド・プレミアリーグの10億ユーロ(約1300億円)とは大きな開きがあるが、「国内レベルでも、LFPは年間の数字が10億ユーロ以上に達することが十分期待できる」とみる経済関係者もいる。

 このように、PSGには切れるカードが数多くある。さらに、今季は期限付き移籍となっているエムバペの移籍金1億4500万ユーロ(約188億円)を来季の支出に計上することが認められる可能性もある以上、PSGはもはやこの問題を過剰に気にかける必要はないのかもしれない。(c)AFP