【8月4日 AFP】スペインの元伝説的ライダーで、約一週間前に同国イビサ(Ibiza)島で交通事故に遭遇したアンヘル・ニエト(Angel Nieto)氏が3日、70歳で死去した。先月26日に四輪バイクで事故に遭ったニエト氏は、危篤状態で病院に緊急搬送されて集中治療室に置かれていたが、容体が悪化して亡くなった。

 MotoGPの公式サイトは同日、ニエト氏について「世界タイトルを通算13回(13は縁起が悪いので自身は常に12+1勝と述べていた)獲得したMotoGPのレジェンドであり、母国を世界の強豪に押し上げた重要人物だ」とコメントした。

 ニエト氏はMotoGPの世界タイトル数で歴代最多を誇るジャコモ・アゴスチーニ(Giacomo Agostini、イタリア)氏に2勝差の同2位を記録。同GPの通算勝利数で合計90勝を記録しているニエト氏を上回っているのは、アゴスチーニ氏と現役ライダーのバレンティーノ・ロッシ(Valentino Rossi、イタリア)だけとなっている。

 同じスペイン出身で今季のMotoGPクラスで総合首位に立っているレプソル・ホンダ(Repsol Honda)のマルク・マルケス(Marc Marquez)は、通算139回の表彰台を誇るニエト氏に対し、自身のツイッター(Twitter)で真っ先に哀悼の意を示し、「僕たちに教えてくれたことすべてに感謝します!安らかに、マエストロ」と投稿した。

 スペイン1部リーグのレアル・マドリード(Real Madrid)もニエト氏をしのび、「レアル・マドリードは、アンヘル・ニエト氏が亡くなったことを深く悲しんでいます。このつらい時期に際し、ご遺族とご友人に対しお悔やみを申し上げます」と述べた。

「スペインのスポーツ界は、いつまでも記憶に残る本物のレジェンドを失いました。彼はその並外れた成功と模範的な行動で、世界中のモーターサイクルファンとスポーツ界にとって永遠の憧れの存在となりました」

 1964年に17歳でGP初参戦を果たし、50ccクラスで通算6回、125ccクラスで通算7回の世界タイトルを獲得したニエト氏は、最後に世界選手権を制した2年後の1986年に現役を引退した。

 ニエト氏は以前、公共放送TVEのインタビューの中で「レースをやめようと決めたのは39歳のときだった。それは最後に選手権を制した2年後で、オーストリアにいたときだ」と語った。

「メカニックが去り、『自分はここで何をやっている?これで終わりだ、常に持っていた勝利への執念が消え去った』。終わってからバイクを降り、『家に帰ろう、終わった』と言ったんだ」

 その後もレースの世界に残ったニエト氏は、1999年にチームの監督として125ccクラスでエミリオ・アルサモラ(Emilio Alzamora、スペイン)を選手権制覇に導く手腕を発揮した。

 スペインのマリアノ・ラホイ(Mariano Rajoy)首相もツイッターで、「モーターサイクルをはじめスペインスポーツ界のレジェンドで、ファンの尊敬と愛情を勝ち取ったアンヘル・ニエトのご家族にお悔やみを」とつづった。(c)AFP