■苦戦が続くジョコビッチとマレー

 クレーでマレーに8勝2敗(全仏では2勝0敗)、ジョコビッチに13勝7敗(全仏では5勝1敗)とトップ2から圧倒的な成績を残していることも、ナダルが大会の本命だとする見方を裏付けている。

 ナダルのコーチを務める叔父のトニ(Toni Nadal)氏にとっては今年が最後のローラン・ギャロスとなる一方、長年のコーチングチームを解散してキャリアを再び軌道に乗せようとしているジョコビッチは、米国出身の伝説的選手アンドレ・アガシ(Andre Agassi)氏を新たに招き入れた。

 昨年の全仏オープンでキャリアグランドスラムを達成したジョコビッチだが、くしくもアガシ氏が現役時代にキャリアグランドスラムを成し遂げた場所もローラン・ギャロスだった。

 ジョコビッチは今クレーシーズン、イタリア国際では決勝でアレクサンダー・ズベレフ(Alexander Zverev、ドイツ)に敗れたが、モンテカルロ(Monte Carlo)でベスト8、マドリードでもベスト4と、少なくとも上昇軌道を描いていることに間違いはない。

 現時点では全仏オープン限定の契約になっている47歳のアガシ氏との関係について、ジョコビッチは「アンドレのことは選手としてだけでなく、人間としても非常に尊敬している。彼は私がこれから直面しようとしているすべてのことを経験している」と話した。

 一方、前回大会決勝でジョコビッチの前に涙をのんだマレーは、肘の故障に苦しむなど、自身の水準からは程遠いシーズンを経験している。4強入りを果たしたバルセロナ・オープンを除き、イタリア国際では1回戦でファビオ・フォニーニ(Fabio Fognini、イタリア)に屈するなど、今季のクレー大会では3回戦突破がない。

 2016年は自身最高のクレーシーズンを送りながらも、最近5大会では決勝進出が一度もないマレーの口からは「とにかく良いテニスができていない」との言葉もこぼれている。

 世界ランキング3位で2015年大会王者のスタン・ワウリンカ(Stan Wawrinka、スイス)も、今季はクレーでわずかに2勝と苦戦を強いられており、仮にナダルやジョコビッチ、マレーがつまずくようなことがあれば、次世代を担うズベレフやティエムにチャンスが訪れるかもしれない。

 20歳のズベレフは、イタリア国際で1990年代生まれの選手として初のマスターズ優勝者に輝いており、23歳で世界7位のティエムは、マドリード・オープンとバルセロナ・オープン決勝でいずれもナダルの前に散るも、ローマ(Roma)では見事に雪辱を果たした。最終的には準決勝でジョコビッチに完敗することとなったが、昨年の全仏オープンでも準決勝まで進出している。(c)AFP/Dave JAMES