【3月29日 AFP】ニュージーランドで子ども時代に高濃度の鉛にさらされていた人々の知能を成人後に調べたところ、同様の影響を受けなかった同年代の人々に比べて低かったとする研究論文が28日、米国医師会雑誌(JAMA)で発表された。

 数十年に及んで行われた調査研究は、金属の一種で強力な神経毒となる鉛の影響が、長期にわたって持続する可能性があることを示している。

 研究対象とされたのは、ニュージーランド南島の都市ダニーディン(Dunedin)に1970~80年代に住んでいた500人以上の人々。この時代には、鉛を添加された有鉛ガソリンが一般的に使用されていたため、自動車の排ガスによって大半の人々が高濃度の鉛にさらされていた。

 この時期のニュージーランドの鉛濃度は、国際標準値を常時上回っていた。米疾病対策センター(CDC)は現在、公衆衛生上の介入を勧告する血中鉛濃度を1デシリットル当たり5マイクログラムとしているが、当時、ニュージーランド在住で血中鉛濃度がこの値を上回る子どもは全体の94%に達しており、血中鉛濃度平均は、現在の警告レベルの2倍に相当する11マイクログラムだった。

 血中鉛濃度がこれほど高い値を示した子どもは、38歳の時点で実施した知能指数(IQ)検査で、鉛への暴露量がより低かった同世代の子どもに比べて、IQが平均で4.25ポイント低かった。

 これは「わずかだが有意な」差であり、高収入の職業に就けるかどうかにも影響を及ぼしたと、論文は指摘している。

 論文の主執筆者で、米デューク大学(Duke University)の研究者、アーロン・ルーベン(Aaron Reuben)氏は「鉛に関連する認知障害は数十年間持続し、人々が従事した職種にそれが現れた」と述べている。

 有鉛ガソリンは、ニュージーランドでは最終的に1996年に使用禁止となった。世界の他の国々でも、使用が段階的に廃止されている。

 だが、専門家らは、鉛汚染には安全レベルなど存在せず、米ミシガン(Michigan)州フリント(Flint)で最近発生した水道水危機は、鉛汚染のリスクが今もなお存在することを示した例だと指摘している。フリントでは、水道管から染み出した鉛で飲用水が汚染された。

 また、貧困層の人々が居住する傾向のある古い建物で、壁などから剥離した含鉛塗料にさらされることも、鉛汚染の主要なリスクの一つとみなされることが多い。(c)AFP