■石器

 今回の出土地は、これまでに欧州地域で発見された中期更新世のヒト化石の中で最西端に位置する。

 ここはまた、前期旧石器時代のアシュール型(Acheulean)石器群に関連づけられる欧州で最古の場所の一つでもある。アシュール石器は、欧州最古の人類の間で使われていたものよりも進歩した石器群だ。

 涙型の握斧(あくふ)などを含むアシュール型石器は、それ以前の石器に比べて製造がより複雑化している。アフリカを起源とするアシュール型石器は、50万年前頃に中東経由で欧州に進入した可能性が高い。

 アシュール型石器が40万年前にはるばる西欧まで到達していたことを示す痕跡の発見は「同石器が比較的速やかに欧州全体に広まったことを意味している」と、クアム氏は指摘する。

■幸運だった頭蓋骨の発見

 まだ未解明な部分が多いが、頭蓋骨を発見できたのは幸運以外のなにものでもないと研究チームは感じている。すんでのところで見逃されるところだったためだ。

 セメントのように硬い堆積物の中にその輪郭を垣間見せていた頭蓋骨が発見されたのは、2014年の発掘計画の最終日。発掘作業員らは1週間かけて、頭蓋骨を含む岩の塊を地層から苦労して切り出した。その作業中、頑丈な破砕ハンマーの一撃が頭蓋骨を粉々に打ち砕いてしまったこともあった。

 岩の塊から頭蓋骨自体を取り出す作業には2年半を要した。

 頭蓋骨の画像には丸い穴があるが、これは発掘作業中に受けた損傷の跡だ。

 研究チームは「人類の祖先に当たるこのヒト属の同地域での生活や洞窟での生活、そして進化の場所に関するより完全な全体像を得るために」今後数年かけて、頭蓋骨とその周囲の詳細に関する究明を進める予定だ。(c)AFP/Kerry SHERIDAN