■グアンタナモで聖戦について説教

 扇動家としての才能があるムスリム・ドスト元収容者は、グアンタナモでの時間を礼拝と他の収容者たちへの説教に費やした。2001年9月11日に発生した米同時多発攻撃の首謀者とされるハリド・シェイク・モハメド(Khalid Sheikh Mohammed)被告と共に「ジハード」(聖戦)について説いていたという。

「彼が説教をすると、収容者たちは泣いた」「彼の大きくて人々をとりこにする声に揺さぶられていた」と、ガリブ元収容者は振り返る。グアンタナモでは、紙すら十分にもらえず、ムスリム・ドスト元収容者は紙コップに詩を書いていたという。

 当時、ガリブ元収容者と共に収容され、現在はトウモロコシ農家を営むいとこのカコ元収容者(35)は「グアンタナモはテロの温床だ」と言う。「あそこはムスリム・ドストのような狂信者に正当性を与えた」のだと。

 2002年に開設されたグアンタナモ収容所は、今も反米感情の矢面に立っている。収容者の4分の1近くはアフガニスタン人だった。大半は非戦闘員だが誤認逮捕されたり、地元の賞金稼ぎや個人的に敵対する人物から不当に通報されたりしていたことが後に判明している。

■「戦場で見たら、生かしておかない」

 米軍が主導する有志連合と共にあるガリブ元収容者は現在、ナンガルハル州バティコット(Bati Kot)地区を統括している。ここは、タリバンとISの拠点に挟まれつつも、緩やかな丘陵にオレンジやメロンの農場がパッチワークのように連なっている地帯だ。

 彼の行動の背景には、タリバンに対する私的な恨みもある。2013年にきょうだいや妻2人、孫たちをはじめとする20人近い家族・親戚をタリバンに殺害された。

 要塞化された基地の中でガリブ元収容者の取材を行っていたさなか、彼の長男がタリバンから奪ったトランシーバーを首から下げて、さらなる衝撃のニュースを伝えた。つい数分前までガリブ元収容者にお茶を注いでいた彼の近親者が、基地を出たところで奇襲攻撃に遭い、射殺されたというのだ。

 ガリブ元収容者は表情を曇らせ、顔を手で覆った。「ムスリム・ドストのようなやつらは外国人と戦っているが、主にアフガン人を殺している」と、自らを落ち着かせながら語り、「ムスリム・ドストを戦場で見たら、生かしてはおかない」と静かに語気を強めた。(c)AFP/Anuj CHOPRA