■バイアグラの乱用

 いわゆる「9・11世代」として知られるアフガニスタンの若者たちは、近代化と伝統、性的欲求と宗教的禁欲の間で思い悩んでいる。

 アフガニスタンの人口60%以上は25歳未満の若者だ。しかし学校で性教育は行われず、セックスカウンセラーも「欧米的」として認められていない。

 また、この国ではデートをはじめあらゆる形の男女交際が不適切な行為とされているため、大多数にとっては、結婚が抑圧された性欲を解き放つ唯一の機会となる。しかし、男性側から女性側に贈る決まりとなっている法外な「持参金」を用意することは難しく、結婚することもできないのが現状だ。

 誰も口にこそしないものの、この国では性的な欲求不満が広まっている。中には、そうした不満と国を引き裂く暴力とを結びつける専門家までいる。

 ヘルプラインやクリニックが若者たちに特に警告したいのは、セックス依存症、避妊しない性交渉、そしてバイアグラ乱用の危険性だ。アフガニスタンでバイアグラは、2001年に旧支配勢力のタリバン(Taliban)政権が崩壊するまで、ほとんど知られていなかった。だが今や「コブラ」「ロケット」「家族を増やす錠剤」などと呼ばれ、高い需要を誇っている。

 センター長のシャヘド氏は、「電話をかけてくる人たちには、性の問題を解決するためにバイアグラやアヘンに頼ってはいけないとアドバイスしている」「それよりも不安に対処して健康的な生活を送るよう促している」と語った。

「同性愛」についての相談もしばしばある。イスラム教は同性愛を禁じており、アフガニスタンでは逸脱した性行動として「悪」と決めつけられている。そのためセンターには、「同性愛に治療法はあるか?」という相談も多く寄せられるという。

■不道徳行為の拡散?

 実は、当のセンターも同国の保守的な社会と闘っている。センターに関わっているアフガニスタン保健省のサイード・アリーシャ・アラウィ(Sayed Alisha Alawi)氏がカブール大学(Kabul University)を訪れた際には、怒りをあらわにした多くの学生たちから「不道徳行為を助長している」と非難されのだという。

 アラウィ氏は、「プログラムはシャリア(イスラム法)にのっとっており、非イスラム的な点はないと学生たちに説明した」と述べたが、「わが国は困難な課題に直面している。性についての健全な議論を不道徳行為の拡散とみる人が大勢いるのだから」と現状を問題視した。(c)AFP/Usman SHARIFI