■殺りくマシーンではない

 研究チームによると、別のマウスを交えた実験を行った際にも、互いを攻撃し合う様子はみられなかった。

 そのことから、この実験の結果が攻撃性を誘発するために使われる可能性があるとは考えないでほしいと、アラウジョ准教授は話す。

「実際、それは現実的に起こり得ることではないと思う。これは、餌探しに非常に特化した行動と考えられる。マウスたちは、自分と同じくらいの大きさのものや、他のマウスに対しては、攻撃するそぶりも見せなかった」

 また、脳への刺激は、専門家の管理下でのみ機能するもので、今回の実験に使用したマウスのどれかが万が一逃げ出したとしても、すぐに他の動物の餌になる可能性が高いだろうと指摘した。

 そしてアラウジョ准教授は、「筋肉の活動と直接的な関連性があることがこれまで知られていなかった脳の部位について、われわれは現在その解明を進めている」と説明し、「長期的には、今回の成果が、運動ニューロンの疾患と変性によって、そしゃく(かむこと)やえんげ(嚥下)の機能が侵される理由を理解する一助となることを期待している。これらの機能障害は、運動疾患の患者に大きな痛手となる影響を及ぼす」と続けた。

 米レノックスヒル病院(Lenox Hill Hospital)の精神科医、モニカ・ミッチェル(Monica Michell)氏は今回の研究について、捕食行動を誘発するための正確な経路を明示する仕組みが本研究の斬新な点であり、それがへんとう体に位置することについては「それほど驚くべきことではない」とコメント。「イヌはどれだけ満たされていようとも、リスを見れば追いかけることについては、飼い主なら誰でも知っている」と話した。

 ミッチェル氏はさらに、「人に関しては、科学者らの間で以前より考えられていること、すなわち、へんとう体が感情に関与していることと、攻撃的な行動が生まれつき備わっており、性質の一部となっていることについて、今回の研究が一種の裏付けになっている」とも付け加えた。(c)AFP/Kerry SHERIDAN