【12月21日 AFP】イタリアの都市ナポリ(Naples)周辺の地下にあるカルデラ、カンピ・フレグレイ(Campi Flegrei)が「再び目覚めつつある」兆候を示しているとの研究論文が20日、発表された。カンピ・フレグレイは、圧力の限界点に近づいている恐れもあるという。

 イタリアとフランスの研究チームは、地下から上昇してくるマグマの、流体と気体を放出させる能力が10倍にまで高まる限界点を初めて特定した。

 論文の主執筆者で、イタリア国立地球物理学火山学研究所(INGV)の研究者のジョバンニ・キオディーニ(Giovanni Chiodini)氏によると、この限界点で水蒸気が放出されると、周囲の岩石の内部に高温の水蒸気が注入されると考えられるという。

 キオディーニ氏は、AFPの取材に応じた電子メールで「熱水が浸透した岩石は、熱せられると、最終的に力学的抵抗が失われ、危機状態への移行の促進を引き起こす可能性がある」と説明。ただ、カンピ・フレグレイが実際に再び噴火するのか、また噴火するとすればいつかなどについて明言することは、現時点では不可能だともした。

 もし噴火を起こせば、カルデラの内部と周辺に暮らす50万の人々にとって「非常に危険なものになるだろう」と同氏は指摘する。カルデラは、火山が頂上部分を吹き飛ばした後に形成される、わん状のくぼ地などを表す。

 カンピ・フレグレイは2005年以降、科学者らが「隆起」と呼ぶ現象を起こしている。そして最近、この地盤変動のペースが上昇し、地殻下層の地震活動が増加しているのだという。

 パプアニューギニアのラバウル(Rabaul)火山と南米エクアドル・ガラパゴス諸島(Galapagos Islands)のシエラ・ネグラ(Sierra Negra Volcano)火山の2つの活火山では、「どちらも噴火前に、カンピ・フレグレイで観測されたのと同じパターンの地盤変動がみられた」と、キオディーニ氏は説明した。

 カンピ・フレグレイは、3万9000年前に起きた噴火で形成されたカルデラ。この噴火では、数百立方キロに及ぶ溶岩、岩石、土石などが空中に放出された。

 科学者らによると、これは過去20万年間に欧州で発生した中で最大級の噴火だという。

 最後の噴火は1538年に起きたが、その規模ははるかに小さかった。

 キオディーニ氏は、都市の密集した人口がリスクにさらされており、「カンピ・フレグレイの活動に関するより詳細な理解を得ることの緊急性を浮き彫りにしている」と述べている。

 研究論文は、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された。(c)AFP