■本場の生産者も脱帽のこだわり

 大岡さんが自然派ワインの造り方を教わったという、その分野のパイオニアの一人であるティエリ・アルマン(Thierry Allemand)さんは、「ワインへの手の掛け方でいえば、彼はわれわれよりもずっとこだわりが強い」と感心する。

 地元の他のワイン生産者の中には、「彼の物事のやり方を理解しない」人もいると、アルマンさんは認める。

 しかし大岡さんのワインの質をとやかく言う人は皆無に等しい。アルマンさんは「とても良く仕上がっていて、さわやかで風味が口の中に長く残る」と評価する。ただ大岡さんは、コルナスではまだたった5回しか収穫していないとして、絶妙なバランスを模索し続けている。

 年間3万本生産するうち、半分は日本へ輸出される。今年はブドウの不作のため、近隣のサンペレ(Saint-Peray)やサンジョゼフ(Saint-Joseph)から、有機栽培されたブドウを買い足さなければならなかったという。

 フランスで数少ない日本人ワイン生産者として名を上げてきた大岡さんだが、その成功の陰には払ってきた犠牲もある。妻と3人の子どもは、日本へ引っ越そうとしているところだ。

 しばらくは両国を行ったり来たりする生活が続くことになるが、いつの日か日本で自分の王国を築きたいと、大岡さんは夢見ている。(c)AFP/Sandra LAFFONT