【11月4日 AFP】ロシア下院は3日、国家のイメージを回復するための取り組みとして、アスリートに運動能力向上薬を強要したコーチに対し、刑事責任を科すことなどを含めた法案を可決した。

 今回の動きは、国家ぐるみのドーピングの証拠が発覚したロシアの選手が、今夏に開催されたリオデジャネイロ五輪では陸上など一部の競技で出場停止処分となり、パラリンピックでは全面的に排除されたことを受けてのものとなっている。

 法案は、上院およびウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)露大統領の承認後に発行となるが、施行された場合には未成年者に対するドーピングの奨励や、暴力や脅迫などでアスリートに違法薬物の摂取を強要した人物には、禁錮1年の刑などが科されることになる。

 この法案には薬物の不正使用に関する罰則の概要は明記されていないが、同国の国家体育運動委員会のメンバーはAFPの取材に対し、ドーピングを行った選手に対して刑事責任を問う別の議案を提出するつもりであると語っている。

 一方、ロシア・オリンピック委員会(ROC)の会長で、国会議員でもあるアレクサンドル・ジューコフ(Alexander Zhukov)氏は、地元メディアに対して、今回の法律はドーピングを「絶対に認めない」という政府の姿勢を示したものであると強調し、「当然ながら、これはわが国が国家ぐるみでドーピングを奨励していたと主張する外国の批判に対する回答である」と述べた。

 世界反ドーピング機関(WADA)の報告書で組織的な不正行為が暴かれ、失墜した名誉を回復するために躍起になっているロシアは、政府主導のドーピング疑惑をきっぱり否定している一方で、完全に信頼を損ねたドーピング検査の引き締めを明言。一連のドーピング疑惑により、同国の陸上競技連盟(ARAF)は、現在も国際大会への出場を禁じられている。(c)AFP