【9月13日 AFP】イラク系米国人のファッションデザイナー、オデイ・シャカール(Oday Shakar)は30代前半とまだ若いが、幼少期に受けたいじめや湾岸戦争(Gulf War)後のイラクでの生活、そしてがんの闘病生活など、米国出身の一般的なデザイナーたちに比べて、その人生は波乱に満ちたものだった──。

 しかしシャカールは、これまで以上に力強くなって戻ってきた。2年間のブランクを経て、映画「007」シリーズに出てきそうな、息をのむほど優雅でエレガントなロングドレスを引っ提げ、自身のレーベルの再スタートを切った。

 米ニューヨーク(New York)で開催の「ニューヨーク・ファッションウイーク(New York Fashion Week)」で発表された17年春夏コレクションは、中東地域の芸術やアラビア文字のカリグラフィー、幾何学模様にインスピレーションを受けたもので、会場は感嘆のため息や割れんばかりの拍手に包まれた。

 シャカールはAFPに対し、「自身の(人生の)物語に美を見つけ出す必要があると感じ、そこからインスピレーションを得た。中東のコンテンポラリーアートに美しくシンプルなシルエットを組み合わせた日常(着)を作った」と話した。

 ハーバード大学(Harvard University)で教育を受けたイラク人の父親と、非の打ち所がないほどスタイリッシュな母親との間に、南カリフォルニアで生まれたシャカール。幼少期には乗馬もしていたという。そして人生の転機が訪れたのは12歳でイラクでの生活を開始した時だった。

 1990~91年、クウェートに侵攻した故サダム・フセイン(Saddam Hussein)率いるイラク軍は、米主導の多国籍軍によって一掃された。そして、この出来事の後、アラビア語も話せないまま、彼は首都バグダッド(Baghdad)というそれまでとは全く異なる世界に突然放り出された。

 当時については、「ちょっとしたカルチャーショックだった」と認めるシャカールだが、デザイナーになりたいと思い至ったのは、このイラクでの暮らしをはじめてからだという。