【8月9日 AFP】イスラエル最高裁は、現在のチェコ出身で1924年に死去した作家フランツ・カフカ(Franz Kafka)の遺稿の所有権はイスラエル国立図書館(National Library of Israel)にあるとの判断を下し、長期に及んだ法廷闘争に幕を引いた。司法筋が8日、明らかにした。

 イスラエル最高裁は7日、カフカが自分の死後に原稿を託すと指定していたカフカの友人で遺言執行者のマックス・ブロート(Max Brod)氏の相続人らの主張を退けた。

 カフカはブロート氏に対して、自分の死後に原稿を焼却するよう指示していたが、ブロート氏はその依頼を果たさなかった。1939年にナチス・ドイツ(Nazi)が当時のチェコスロバキアに侵攻し、ブロート氏は原稿を持ってパレスチナに逃れた。

 ブロート氏は1968年に亡くなる際、秘書のエステル・ホフェ(Esther Hoffe)氏に原稿を遺産として渡し、「(イスラエルの)テルアビブ(Tel Aviv)にある国立エルサレム・ヘブライ大学(Hebrew University of Jerusalem)か、イスラエル国内外の機関に寄贈する」よう指示していた。

 しかし、ホフェ氏はカフカの原稿を手元に置き続け、2007年に死去する際に2人の娘に遺産として渡していたことで複数の法廷闘争に発展していた。

 2009年に始まった裁判で国側はブロート氏の遺言を盾に、未発表の原稿を含めた全ての原稿を渡すようホフェ氏の娘たちに求めたが、娘たちは原稿はブロート氏から自分たちの母親であるホフェ氏への贈り物だったと反論していた。このコレクションは数百万ドル(数億円)の価値があると推定されている。

 ホフェ氏は生前、カフカの傑作の一つとされる「審判(The Trial)」のオリジナル原稿を200万ドル(現在の為替レートで約2億円)で売却。ホフェ氏の家族はブロート氏から譲られた大量のコレクションをイスラエルとスイスにある銀行の貸金庫に保管し、一部の原稿をコレクターに売却していた。

 最高裁は判決文の中で「ブロート氏が望んでいたのは、自身の財産が高値で売却されることではなく、それらを寄贈するのにふさわしい文芸・文化機関を見つけてもらうことだった」と述べた。(c)AFP