【6月17日 AFP】ロシアのビタリー・ムトコ(Vitaly Mutko)スポーツ相は16日、同国のリオデジャネイロ五輪出場の可否を決める国際陸上競技連盟(IAAF)の理事会を翌日に控え、世界反ドーピング機関(WADA)の報告書を批判した。

「国家ぐるみの」ドーピングにより、昨年11月から資格停止処分を受けているロシアは、IAAFが五輪出場を認めるよう激しいロビー活動を展開しているが、ロシア人選手に対して実施される予定だった検査が数百回にわたり同国の当局から妨害されたとするWADAの報告書により新たな打撃を受けた。

 IAAFはオーストリアのウィーン(Vienna)で理事会を開き、ロシアの陸上選手のリオ五輪出場の可否について投票を行うが、ムトコスポーツ相はIAAFから求められたすべての改革が実施されたことを強調している。ムトコスポーツ相は露インタファクス(Interfax)通信に対し、「われわれは彼ら(IAAF)が要求したすべての基準を満たした。100の基準が提示されたが、私の意見ではそれらをすべて満たしている」と語った。

 ロシア五輪委員会(ROC)のアレクサンドル・ジューコフ(Alexander Zhukov)会長は、100人前後いる同国の陸上代表選手をリオ五輪から除外するのは「五輪ムーブメントに反する」と主張し、「五輪憲章はどんな人でも参加すべきという前提に基づいている」として、IAAFが「客観的でバランスの取れた決定」を下すことを期待していると述べた。

 選手からもクリーンな選手は連帯責任を負うべきではないとして、連盟をまとめて処分する方針に非難の声が上がっている。棒高跳びのスター選手で、自身最後の五輪出場に向けてトレーニングを積んでいるエレーナ・イシンバエワ(Yelena Isinbayeva)は、米ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙の論説で、「不正行為をしていないことが何度も証明されている私やほかのクリーンなロシア人アスリートの出場を禁じるのはフェアでないと思う」とコメントしている。

 これに対してカナダ陸上競技連盟(Athletics Canada)は、「ロシア陸上界における組織的で根深いドーピング文化が風向きを変えたという証拠はほとんどないと強く感じている。なので彼らを再び五輪に受け入れる正当性はない」とし、ロシアの取り組みはあまりに限定的で遅過ぎるとしている。

 カナダ陸連のロブ・ガイ(Rob Guy)氏は、「夢をかなえるために不正をせず努力したクリーンなロシア人アスリートには同情する。残念ながら彼らの連盟は彼らを裏切っている。法令順守の欠如、非協力的な姿勢、過去の五輪での薬物違反が次々と明るみに出ており、すべてのロシア人アスリートのパフォーマンスに対して懐疑的にならざるを得ない」と語った。「われわれはIAAFに対し、スポーツと五輪ムーブメントの品位を守るために、慎重過ぎるぐらい慎重になるよう促したい」