■確執から敵対へ

 そして同じ2010年の夏、モウリーニョ氏がマヌエル・ペジェグリーニ(Manuel Pellegrini)監督に代わってレアル・マドリード(Real Madrid)の指揮官に就任すると、両者の関係はもはや敵対に近いものになった。

 モウリーニョ氏から何度も挑発されたグアルディオラ氏は、3週間の間に続いた「エル・クラシコ(El Clasico)」4連戦の最中、モウリーニョ氏のメディアを使って対立をあおるやり方を念頭に置きながら、皮肉を込めて記者会見室の「王様、くそ大将」と呼んだ。バルセロナはその後、準決勝でレアルを退けると、そのままチャンピオンズリーグのタイトルを獲得した。

 両者の対立が最高潮に達したのが、翌シーズンのスペイン・スーパーカップ(Spanish Super Cup 2011)だった。試合そのものが大荒れになるなかで、モウリーニョ氏は当時のバルセロナの助監督、ティト・ビラノバ(Tito Vilanova)氏の目に指を突っ込むところをカメラにとらえられている。

 2人は公の場での振る舞いも、サッカーに対するアプローチも対照的だ。グアルディオラ氏は物静かなタイプで、サッカーに美しさを求めるのに対し、モウリーニョ氏は対立を仕掛けることを得意としていて、勝利を最優先する。

 それでも両者は、世界最高峰の名将と評価されている点においては共通している。そして2人は、1996年から4年間、バルセロナで一緒に働いていたこともある。グアルディオラ氏は当時、バルセロナの現役選手で、モウリーニョ氏はボビー・ロブソン(Bobby Robson)監督やルイス・ファン・ハール(Louis van Gaal)監督の補佐役を務めていた。モウリーニョ氏はファン・ハール監督の下でチーム練習の指揮を任され、指導者としての腕を磨いていったとされている。

 モウリーニョ氏とグアルディオラ氏は、どちらも輝かしい実績を手にマンチェスターへやって来た。成功しなければならないという重圧を背負い、さらに多大な予算を与えられていることも2人の共通点だ。