■「神を恨んだ」

 最初の数日間は緊張が続いた。「神を恨み、太陽と月の下にいるすべてを責めた」とラムさんは言う。その段階を過ぎると、死についての哲学的な議論を延々と続けた。

 その間、多くの船が近くを通り、4人は携帯電話のガラス画面を太陽に反射させて必死で自分たちの存在を知らせようとしたが、彼らを発見したり救助したりする船はなかった。

 またある時は、ラムさんが遠くに陸を見つけ、泳いで渡ろうと海に飛び込んだが、スペイン人の男女がサメのようなものを見たと言ったため、ボートに戻った。実際にはサメはいなかったのかもしれないが、岸に泳ぎ着く体力はなかっただろうから、結果的に命拾いしたのかもしれない、とラムさんは振り返った。

 4人は10日間の漂流の後、マレーシア海域で2人のベトナム人が違法操業していたトロール漁船に拾われた。丁重に扱われたという。ラムさんは2人の連絡先を聞き出しており、自分の家族が申し出た謝礼5万リンギット(約140万円)を直接届けるつもりだ。

 この漁船で1日過ごした後、遭難した4人はマレーシアの沿岸警備船へ引き渡され、13日にコタキナバルへ到着し、検査を受けた。全員、衰弱はしていたものの良好な状態だと言う。「家に帰ってまずとにかく、たくさん食べた」と言うラムさん。16日はくしくも44歳の誕生日で、「今年は最高の誕生日になった」と語った。(c)AFP/Satish Cheney