■ロナウドを悩ませるユーロの記憶

 ウクライナ、ポーランドの共催で行われた2012年大会は、ロナウドにとって最も悔しい大会だっただろう。

 前回大会の1年後、うわさどおりレアルに移籍したロナウドは、2011-12シーズンにクラブで公式戦60得点を記録し、ジョゼップ・グアルディオラ(Josep Guardiola)監督の下で黄金時代を迎えていたFCバルセロナ(FC Barcelona)を抑え、スペイン1部リーグ優勝を成し遂げていた。

 そうした状況で大会を迎えたロナウドは、ポルトガルがドイツ、デンマーク、オランダと同じ死のグループに組み込まれるなか、オランダ戦で2得点を記録するなどチームをけん引し、決勝トーナメントへと導いた。続く準々決勝のチェコ戦でも決勝点を奪い、チームの勝利に貢献している。

 しかし、準決勝のスペイン戦でポルトガルはPK戦の末に敗退。スペイン代表の主力だったバルセロナの選手たちによるリベンジを、苦悶の表情で見つめるしかなかった。

 ロナウドは重圧のかかる場面でおじけづくような選手ではない。それに、彼はどうしても勝ちたがっていた。だから5人目のPKキッカーを選択した。しかし、チームはロナウドまで順番を回すことができず、PK戦に敗れた。ロナウドは後悔とともにドネツク(Donetsk)の夜空を見上げ、「こんなのあんまりだ」とつぶやくしかなかった。

 数々の記録を打ち立ててきたロナウドにとって、今回の欧州選手権ではチームの優勝だけではなく、個人としても新たな記録がかかった大会になる。大会でゴールを決めれば、ロナウドは史上初めて欧州選手権の4大会で得点した選手になる。ほかにもミシェル・プラティニ(Michel Platini)氏が持つ欧州選手権の最多得点記録、通算9得点まで3得点差としている。

 大会初出場のアイスランド、主要国際大会の出場が1986年以来となるハンガリー、そしてオーストリアというグループリーグの顔ぶれをみれば、記録は達成可能な目標にみえる。それができれば、来年のバロンドール争いでライバルのリオネル・メッシ(Lionel Messi)に対して優位に立つこともできるだろう。

 それでも、見栄えにこだわるロナウドにとって、名声と富を得て、レアルとユナイテッドでリーグ優勝と欧州チャンピオンズリーグ制覇を成し遂げてきた今、真の最終目標が母国にトロフィーをもたらすことなのは間違いない。

 2004年大会の決勝で優勝を逃したあと、19歳のロナウドはこう語っている。「すごくがっかりしているけれど、欧州のタイトルを取ることで挽回する機会はまだ残っている」――その言葉を実現するのであれば、7月10日にパリ(Paris)で行われる決勝は、おそらく最後の機会になるかもしれない。(c)AFP