【1月30日 AFP】韓国のシム・グソプ(Shim Goo-Seob)さんは、同国と北朝鮮との間で離れ離れになった家族の再会を支援する民間組織を20年以上運営してきた。しかし危険を冒してまで秘密裏に続けてきた活動もそろそろやめる潮時だと、シムさんは感じている。

 2003年に300件程度だった非公式な再会件数は、国境警備の強化や必要経費の大幅増を背景に14年にはわずか10件に減少。シムさんは「越境は今や、一層危険で高額になった。私たちは、事実上ほとんど活動していない」とAFPに明かした。

■公式再会事業を補完した民間ネットワーク

 1950~53年の朝鮮戦争(Korean War)により、朝鮮半島の南北分断が固定化され、数百万人が家族と生き別れになった。

 韓国と北朝鮮が初めて公式な再会事業を行ったのは1985年。その次に再会が行われたのは15年後だった。その間に、離散家族の接触を支援する民間組織が設立され、中国をはじめとする第三国での再会が実現することもあった。こうした民間組織の仲介による非公式な再会は1990年に35件実現し、93年までに220件を超えるほど急増した。

 シムさん自身も、94年に北朝鮮に暮らす弟と中国で再会を果たした。自分たちと同じように再会を希望する人々を支援しようと、組織結成に踏み切ったのはその4年後のことだった。

 まずは中国と北朝鮮に「協力者」の地下ネットワークを構築し、家族間の接触の足掛かりにする。その後、中国での再会を具体的に計画していく。

 国の内外を問わず移動が厳しく制限されている北朝鮮から人を国外に出そうとすれば、贈賄や文書偽造はどうしても必要になる。シムさんは「基本的にはお金の問題だ」と言う。事実、中国で2度警察に拘束された経験があるが、いずれも賄賂を渡して何とか事なきを得たという。