【1月21日 AFP】ポーランド南部のアウシュビッツ・ビルケナウ(Auschwitz-Birkenau)強制収容所跡地にある博物館に20日、1足の小さな靴が寄贈された──。この靴は、第2次世界大戦(World War II)中のナチス・ドイツ(Nazi)の同強制収容所から生還した一人の女性が所有していたものだ。

 ポーランド生まれのイスラエル人、バチェワ・ダガン(Batszewa Dagan)さん(90)は、10代のころ、同強制収容所の収容者仲間から手作りの小さな「幸運を呼ぶお守り」をもらった。

「(その女性は)悲しみにくれ、自分の娘のことを話していた。どれほど娘が恋しいのかを語り、ここから生きて出られるのだろうかと考えていた」と、同博物館のウェブサイトに掲載された声明でダガンさんは述べている。

「そして彼女は、この小さな靴を私のために作ってくれたのです。『あなたを自由の地に運んでくれますように』と」。その靴は長さ1センチにも満たない小さなものだった。

 その女性の名前や行く末は歴史の中に埋もれてしまったが、ドイツ系ユダヤ人の彼女は、警官の夫と娘を残してアウシュビッツに送られたのだという。

「どうやって作ったかって?彼女は薄い革の破片を見つけ、誰かから針をもらって、糸もなんとか工面して…この靴を作ったのです」

 子どもたちや青少年にホロコーストについて教える際に用いられる数多くの本の著者であり詩人でもあるダガンさんは、ナチス・ドイツの収容所を転々とした後、イスラエルに戦後、移住した。

 ポーランド南部オシフィエンチム(Oswiecim)のアウシュビッツ強制収容所では、1940~1945年の間に100万人の欧州のユダヤ人が死亡した。(c)AFP