【12月27日 AFP】音楽の世界に浸ったり、スポーツを楽しんだりして余暇を過ごすのが好きな人もいるが、墓石を巡る人たちにとっては英国の墓地が格好の遊び場だ。

 墓地を巡っているのは、「墓地クラブ(Cemetery Club)」のメンバー。「見落とされ、誤解されがちな場所」である墓地を観賞した記録を毎週月曜日にブログで公開し、多くの墓地愛好家、いわゆる「墓石狂(taphophiles)」から支持されている。

 2013年に開設されたブログには、「ここ(墓地)にはストーリーがある。英雄や悪党、発明家、俳優、そして、かつて生き、笑い、愛され、涙を流した人々のストーリーがある」と書かれている。

 若者を中心とする同クラブのメンバーらは、ロンドン(London)の忘れ去られた墓地や霊廟(れいびょう)、記念碑を探訪。クラブの創設メンバー、シェルドン・グッドマン(Sheldon Goodman)さん(28)はAFPに、「ブログでは故人のことを振り返り、ほんの少し彼らを蘇らせている」と語った。

 グッドマンさんは、風変りな娯楽で知られる英国でも、自分の趣味、死に関わる趣味が変わっていると受け取られることもあると認識。墓地のブログをやっていると人に話すと、たいていは「困惑するか興味を持つか、もしくはその両方」で、「え?」と言われることが一番多いという。

「だけど、僕は日々の仕事を繰り返す普通の人間だ。黒ずくめの服装などしないし、頭がい骨やひつぎの写真を抱えて隅の方に座ったりもしない」

 グッドマンさんが墓地に魅力を感じ始めたのは幼少時代。「子どもの頃、よく墓地を散歩して、素晴らしい墓石や墓を見て回った。だけど、まだ小さかったから、ちゃんと墓を見ることはできなかった」のだという。20年後、グッドマンさんは英国内や海外で幾つもの墓地を訪れ、幼少時代にできなかったことを取り戻した。

 墓地の訪問については、墓地クラブのブログ(https://cemeteryclub.wordpress.com/)やツイッター(Twitter)でその詳細を見ることができる。

■仮想墓地も登場か

「墓石訪問者」らは好奇心に駆られ、しばしば人と違ったやり方を試みる。

 ステファン・ロバーツ(Stephen Roberts)さんは、ロンドンのハンガーフォード・ブリッジ(Hungerford Bridge )のたもとにある、メンバーだけが知っている「スケートボード墓地」の写真を撮った。グッドマンさんによると、スケートボーダーたちはボードが壊れてしまった時、この橋で儀式的なボードの葬儀をするのだという。

 もう一人の創設メンバーであるクリスティーナ(Christina)さんは、米ゲームメーカー、ロックスター・ゲームス(Rockstar Games)のクライム・アクション・シリーズ、「グランド・セフト・オート V(Grand Theft Auto V)」で、仮想墓地を歩く。「デジタルの墓地はほとんど本物と同じで、実際の墓地のように穏やか」だと話した。

「将来、ストリートビューで歩き、墓石を押すと故人の経歴が表示されるような仮想墓地が誕生するかもしれない」と、グッドマンさんは述べた。(c)AFP/ Edouard GUIHAIRE