■リオは「真の五輪精神」の下で

 オーストラリアのオリンピック委員会(AOC)も、同様の考えを表明している。

 同国のリオ五輪派遣チームの代表を務めるキティ・チラー(Kitty Chiller)氏は、シドニー(Sydney)で会見し、「リオではロシアがいない方が、陸上競技の評価を回復しやすくなると思います。その方が見ている人も、出場選手はみなクリーンだと、本物の五輪精神の下で競い合っていると考えてくれるでしょう」と話した。

 スポーツ界では、国際サッカー連盟(FIFA)の内部腐敗の問題に引き続き、今度は長らく五輪の花形競技とされてきた陸上が危機に飲み込まれつつある。

 気がかりなことに、WADAは報告書で「組織的な薬物違反の問題に直面しているのは、ロシアだけというわけでもなければ、陸上選手だけというわけでもない」と危機感をあらわにし、薬物違反がロシアや陸上競技に限った話だとは考えにくいとの見解を示している。

 今回の調査が開始されるきっかけとなったのは、独テレビ局ドイツ公共放送連盟(ARD)が昨年12月に放送したドキュメンタリー番組だった。

 調査に当たった独立委員会のリチャード・パウンド(Richard Pound)氏も、「はっきり言って、ドーピングの問題を抱えているのがロシアだけとは考えていないし、ドーピング問題に侵されているのが陸上だけとも考えていない」とだめを押している。

「ARDの番組、そしてその後の展開の双方を考えれば、ケニアが深刻な問題を抱えているのは極めて明白に思える。だいぶ時間がかかったが、ようやく問題があることが認識された」

 ARDらは、2001年の世界陸上から2012年のロンドン五輪までの間、世界大会の陸上競技で授与されたメダルのうち、3分の1にあたる146個でドーピングが疑われると報じている。そしてそのうち18個が、ケニアの選手が獲得したものだったという。(c)AFP/Max DELANY