■「エレファント・ロケット」

 アレッポの人々が好きな冬は、雲をもたらしてくれる。雲がかかれば、アサド政権の軍用機が飛んだり、私たちの上に爆弾を落としたりすることが難しくなる。

 私たちは軍用機の音につきまとわれている。朝か夕方、毎日ほぼ同じ時間にやって来る。日中は、たる爆弾の落下地点を予測する時間が、数秒だがある。だが夜間はまったく違い、もっと危険だ。暗闇の中でどこに落ちるか、知るすべはない。

 政権側はロケットがついた「エレファント・ロケット」と呼ばれる爆弾も使う。発射されるときに、ゾウの鳴き声のような陰鬱(いんうつ)で大きな音を出すために、この名がついた。そして、これはどこに着弾するか予測が極めて難しい。

 以前は2、3か月おきに気分転換のためにトルコへ行っていた。だが国境が最近閉鎖され、トルコには入りにくくなった。今ではただ国境を越えるために、密入国あっせん業者に400ドル(約4万8000円)ほど払わないとならない。もう私が忍耐力を回復するために、一息つける安全な場所はなくなった。

 私は今、FIPCOM賞を受賞するためにフランスにいる。だが、日々命を危険にさらしてアレッポにいる妻や家族、友人たちのことがずっと頭から離れない。私の心にはいつも内戦がある。(c)AFP/Baraa al-Halabi

シリア北部の都市アレッポで政府軍の空爆後、がれきの中で抱き合う人々(2014年7月15日撮影)。(c)AFP/BARAA AL-HALABI

この記事は、シリア・アレッポを拠点とし、AFPに定期的に写真を提供しているフリーランス・カメラマン、バーラ・ハラビが、AFPパリ本社のローラン・ドクールソン、ジャニーヌ・ハイダーと共同執筆したもの(アラビア語・仏語)を、エリザベータ・マリキーナが英語へ翻訳し、9月18日に配信されたコラムを、日本語へ翻訳したものです。
バーラ・ハラビのツイッター: https://twitter.com/baraaalhalabi