【7月21日 AFP】HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染して生まれたフランス人の10代の女性が、薬物療法をやめてから12年間寛解を維持しているとの研究報告が20日、発表された。この世界初の症例は、早期治療の可能性に対する期待を新たにするものだという。

 仏パスツール研究所(Institut Pasteur)HIV・炎症・持続部門のアシエル・サエス・シリオン(Asier Saez-Cirion)博士が主導した研究によると、現在18歳になるこの若い女性は、治癒したとみなされているわけではなく、治療を停止した状態で完全な健康を維持しているのだという。

 カナダ西部の都市バンクーバー(Vancouver)で開かれた国際エイズ学会(International AIDS SocietyIAS)の会議で発表された今回の研究によると、HIVに感染した子どもが長期間の寛解状態にある症例が確認されたのは科学史上初という。

 サエス・シリオン博士は、AFPの取材に「細胞内でHIVは検出されるが、血漿(けっしょう)中のウイルス複製は検出できない」と語り、「この女性がなぜ感染を制御できたのかは、まだ不明だ」と続けた。患者のごく一部にみられる、感染の自然制御に関連する遺伝因子は、この女性は持っていないという。

「女性がこれほどの長期間、ウイルス学的寛解を維持している理由は、感染後の非常に早期から、抗レトロウイルス薬の混合薬を投与されていたからである可能性が最も高い」と研究報告は指摘する。

 研究報告によると、女性は、胎内か出産時のいずれかでHIVに感染。5歳の時、家族は何らかの理由で治療計画を中断した。1年後に家族が再度、女性を受診させると、女性の「ウイルス量が検出限界以下であることが判明した」という。医師らは、抗レトロウイルス治療を再開せずに、女性の経過を観察することにした。

 成人の場合でも、HIV感染直後の治療開始が不可欠であることを支持する証拠が増えつつあるが、研究者らによると、今回の異例の症例は、それをより裏付けるものだという。また、「HIVに感染した子どもの場合、早期治療後に長期の寛解が維持される可能性があることを示唆している」と研究報告は指摘している。(c)AFP