【6月24日 AFP】1分が1分でなくなる時は、いつでしょう?──答えは、今年のグリニッジ標準時(GMT)6月30日23時59分(日本時間7月1日午前8時59分)。1分が61秒になる時だ。

 この奇妙な出来事は「うるう秒」を挿入するために起こる。太陽と月の天体間引力の影響を受ける地球の自転に、高精度の時計を同期させるための調整がうるう秒だ。地球で暮らす72億5000万人のうち、この変化に気がつくのはわずかな人々にすぎないだろうし、その瞬間をどう過ごすか計画を立てる人はさらにわずかだろう。

 その一方で、時計製作の専門家たちにとって、うるう秒の挿入は非常に大きな問題であり、うるう秒を廃止すべきか、それとも存続させるべきかという論争も存在する。うるう秒の挿入を決定する権限をもつ国際機関「国際地球回転・基準系事業(International Earth Rotation and Reference Systems ServiceIERS)」の地球回転事業部門の責任者であるダニエル・ガンビス(Daniel Gambis)氏も「(うるう秒の挿入には)問題点も存在する」と認めている。

 はっきり言うと、うるう秒は家のタンスの上に置いてある古時計のような時計にとってはあまり必要ではない。だが、時間を刻む動きに原子の周波数を利用するような超高性能時計にとっては非常に重要だ。

 GMTを世界共通の標準時として使用するために調整した「協定世界時(UTC)」に対するうるう秒の挿入は、1971年以降で25回実施されている。

■「うるう秒」は廃止すべき?

 だが過去15年にわたり、うるう秒の挿入を実施すべきかどうかについて、白熱した議論が交わされている。

 フランス原子力庁(CEA)のロラン・ルゥク(Roland Lehoucq)氏は「(うるう秒挿入の)廃止を唱える人々は、内部に時計を搭載した機器が非常に多く存在するようになり、実施がますます困難になっていると主張する。問題はコンピューター間の同期だ。問題を処理するに当たり、数日を要することもある」という。

 ガンビス氏によると、最近うるう秒の挿入が行われたのは2012年6月30日だが、その際には多くのインターネット・サーバーで障害が発生した。例えば、オーストラリアのカンタス航空(Qantas Airways)では、オンライン予約システムが数時間にわたり停止する事態に見舞われたという。

「うるう秒を廃止するときが来た。うるう秒は複雑な事態やバグを引き起こすばかりだ」と仏パリ天文台(Paris Observatory)時空標準機構(SYRTE)研究所の原子時計専門家、セバスチャン・ビゼー(Sebastien Bize)氏はいう。

 それでもガンビス氏は、原則に基づいてうるう秒を挿入すべきだと主張し「人間が技術に従属すべきなのか?それとも技術が人間に従属すべきなのか?」と問いかけた。

 もしもうるう秒をなくしてしまえば、人間が数える時間が地球の自転と正確には対応しなくなることを意味する。ガンビス氏は「それが2000年後には大きな意味を持つことになる。地球が完全に一回転する時間とUTCの間に、1時間のずれが生じるのだ」と説明し、さらに「数万年単位になれば、人々は午前2時に朝食をとることになる」と語った。(c)AFP/Pascale MOLLARD