【6月2日 AFP】イスラム教シーア派(Shiite)系民兵組織フーシ派(Huthis)が政権掌握を宣言し、サウジアラビアなどが軍事介入したイエメンで1日、フーシ派に拉致されていたとみられる数人のうち米国人1人が解放され、空路で隣国オマーンに入った。オマーン国営メディアによるとシンガポール人1人も解放され、帰国の途上オマーンに到着した。

 オマーンは、イランの支援を受けているフーシ派と米国との協議を仲介していた。オマーンにいるある外交官は、米国とフーシ派の協議は和平交渉の進展を図る目的で行われたと語った。国連(UN)は同様の協議をスイス・ジュネーブ(Geneva)で開きたい考えだったが、実現していなかった。

 米国務省は先に、米政府の中近東問題のトップ、アン・パターソン(Anne Patterson)国務次官補が「多くの事項に関して」協議するためにオマーン入りしているということだけを明かしていた。

 解放された米国人はジャーナリストのケーシー・クームス(Casey Coombs)氏と伝えられている。米国務省のマリー・ハーフ(Marie Harf)氏も、「米国籍を有するケーシー・クームス氏がイエメンを出て、オマーンの首都マスカット(Muscat)に無事到着した」と認め、「体調は安定している。米大使と領事館職員が空港で出迎え、領事関係で可能な限りの支援を提供している」と述べた。

 解放された米国人とシンガポール人がどこで、誰によって拘束されていたかは確認されていないが、国営オマーン通信(ONA)は、「その米国人とシンガポール人を捜すためイエメンの関係者らと調整を続けてきていた」オマーン当局の協力により2人は「発見された」と伝えている。

 米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)は、2人はフーシ派が掌握している首都サヌア(Sanaa)に近い刑務所で拘束されていたとみられると伝えた。さらに、うち1人はビザ(査証)の期限が切れた後も不法残留したとして拘束されたが、後にイエメンの「機微に触れる」地域に入ったことが問題視されたとしている。

 オマーンはフーシ派を支援しているイランと、イエメンに軍事介入したサウジアラビアの両方と良好な関係を維持しており、しばしば仲介者としての役割を果たしている。湾岸協力会議(Gulf Cooperation CouncilGCC)加盟6か国のうち、オマーンだけがイエメンに軍事介入しているサウジアラビア主導の連合軍に参加していない。(c)AFP/Jamal al-Jabiri with Lynne al-Nahhas in Dubai