■石器を作ったのは誰か

 石器は、約330万年前の火山灰層の真上で発見された。火山灰層の年代測定はアルゴン同位体を用いて行われた。この年代推定値は、石器が発見された堆積層中の含鉄鉱物に残る地球磁場変化の痕跡を測定することで裏付けが得られている。

 また研究チームの他のメンバーは、土壌中の炭素同位体を調査した。この結果と、同地で出土した動物化石とを併せて分析することで、研究チームは当時の植生を明らかにすることができた。現在は砂漠に似た地形のトゥルカナ湖西部は、300万年以上前は低木が生い茂り、一部が森林になっていたことを発見して研究チームは驚いた。

 誰が石器を作ったのかは大きな問題だ。可能性の一つは、現生人類に至るヒト属系統に属する未知の人類だ。彼らはホモ・ハビリス登場までの数十万年間、地球を闊歩していたのだろうか。

 もう一つの可能性は、ヒト属の遠い親類以下に位置付けられる、脳が小さいホミニンだ。この候補として、挙げられるのはケニアントロプス・プラティオプス(Kenyanthropus platyops)と呼ばれるホミニンで、1999年に今回の石器の発掘地から1キロほどしか離れていない場所から、歯と頭蓋骨の一部が発見されている。

 もう一つの候補は「ルーシー(Lucy)」として知られる化石で有名になったアファール猿人(Australopithecus afarensis)だ。約330万年前の比較的近い年代に、現エチオピアのアワシュ(Awash)川下流域にあるアワシュ渓谷(Awash Valley)に生息していた。

 新たに見つかった石器を誰が作ったのかは今のところ特定されていないが、彼らは驚くほど利口だったと研究チームは指摘している。

 研究チームによると、ホミニンが脳と神経系の重要機能を進化させた時期について再検討する必要性を今回の石器は示唆しているという。論文には、「石器製作者の手の運動制御はかなり高度だったに違いない」とあり、また脊髄の変化および大脳皮質と小脳の拡大は「330万年前より以前に起きた可能性がある」と記されている。(c)AFP/Richard INGHAM / Laurence COUSTAL