【4月10日 AFP】米サウスカロライナ(South Carolina)州で武器を携行していなかった黒人男性を白人警察官が射殺した事件を機に、ホワイトハウス(White House)から各自治体まで全米規模で、警察官のボディーカメラ装着を求める声が再び高まっている。

 きっかけとなった事件は、サウスカロライナ州で4日、白人警察官のマイケル・スレーガー(Michael Slager)容疑者が、黒人男性のウォルター・スコット(Walter Scott)さん(50)に対し、背後から発砲して死亡させたもの。スレーガー容疑者は当初、身の危険を感じたと主張していたが、携帯電話で撮影された映像から、主張が事実と異なることが発覚。スレーガー容疑者は免職され、訴追された。殺人罪で有罪が確定すれば、終身刑または死刑になる可能性がある。

 警察業務に関する研究を専門とするピッツバーグ大学(University of Pittsburgh)のデービッド・ハリス(David Harris)教授は「携帯電話の映像が明るみに出ていなかったら、あの警察官は今もパトカーに乗って市内を巡回しているはずだ」と指摘する。

 この10~15年で米国のパトカーに搭載されるようになったダッシュボードカメラは5000ドル(約60万円)と高価なのに対し、ボディーカメラの価格は1000ドル(約12万円)程度。米国ではまだ革新的な機器だが、専門家らは3~5年後には標準装備となっている可能性があると予測する。

■研究では有効性が証明

 昨年、米国では武器を持っていない黒人が、白人を主とする警察官に殺害される事件が相次ぎ、全米規模で抗議運動が巻き起こった。特に昨年8月にミズーリ(Missouri)州ファーガソン(Ferguson)で黒人青年のマイケル・ブラウン(Michael Brown)さん(当時18)が白人警官に射殺された事件では、抗議デモが騒乱に発展した。また、人種差別や警察力の過剰行使に関する議論も再燃している。

 ハリス教授によれば、警察官のボディーカメラ装着について、世論が真剣に議論するようになったのは、ようやく今年に入ってからだ。カメラ機能付き携帯電話の普及もあり、ボディーカメラ装着に対する市民らの反応にも変化がみえている。

 米国や英国の過去の研究では、証拠収集や偽証回避、警察官側の主張の裏付けなどでボディーカメラの有効性が証明されているという。

 ホワイトハウスのジョシュ・アーネスト(Josh Earnest)報道官は、ボディーカメラ装着は「警察官と彼らが働く地域社会との間の信頼構築に好影響をもたらすだろう」と談話を発表した。(c)AFP/Jennie MATTHEW