■「プレッシャーは特権」

 ラケットを破壊したことについては、気持ちを切り替える中で、自分自身との対話を行ったという。

「(ラケットの破壊が)終わったとき、自分に言い聞かせたんだ。『オーケー。これでおしまい。忘れよう』とね。再び集中して、試合に戻り、ベストを出さなければいけないと考えた」

 ジョコビッチは、重圧が自身を押しつぶそうとしているとき、その瞬間だけにとらわれないよう意識しているという。

「課題に直面するとき、それは実際に自分を痛めつけているわけでも、自分の肩にのしかかっているわけでもないと思うんだ。僕が手にした特権だよ。この立場にいるから手にできるものだろ」

 もちろん、カリフォルニア(California)で試合の魔物に苦戦したのはジョコビッチだけではない。

 女子シングルスの前回覇者フラビア・ペネッタ(Flavia Pennetta、イタリア)は、マリア・シャラポワ(Maria Sharapova、ロシア)との2時間6分の試合で、自分の感情に負けそうになる瞬間があった。

 この試合で第1セットを落としたペネッタは、いったんコートを離れトンネルの方へ行き、叫んだり怒鳴ったり、あるいは「泣いたり」して呼吸を整えた。

 コートに戻ったペネッタは、ここから落ち着きを取り戻し、3-6、6-3、6-2の逆転でシャラポワを退けた。