■言うはやすし、行うは難し

 その日、私の親友のバイカー、ギー・アンドリューが無人機を「発射させる」役を担ってくれた。計画はこうだった。まず無人機は電源を入れず(万一、警察に職務質問されても電源が入っていないことを証明するために、バッテリーも外しておいた)、ギーが空高く無人機を投げたところを、私が撮る。そして落ちてきた無人機をキャッチするのもギーの役目だ。通りすがりの人たちからは変な目で見られるだろう。だが私にとっては、電源を入れないことで逮捕を免れることのほうが重要だった。

 最初の目的地はエッフェル塔だ。すぐに私たちの計画は「言うはやすし、行うは難し」だと判明した。無人機を投げても横向きになったり、逆さまに飛んだりしてうまくいかなった。10回飛ばして、ようやくまともな1枚が撮れる状態だった。そして毎回、ギーは私の高額な無人機が墜落しないようキャッチするために頑張ってくれた。足がもつれて、水たまりで転んでしまった場面もあった。

 そのうち、誰かが私たちのことを警官に告げ口した。私たちのおかしな動きが注目を集めたのだ。自転車に乗った警官3人を連れて男性が近づいて来るのが見えた。彼らの視線を感じた私たちは、次の場所へと移ることにした。

 パリ南西部にある、首都を見下ろす景色が素晴らしいサン・クルー公園(Parc de Saint Cloud)。ここでも大勢の注目を集めた。「いつになったら飛ばすの?」と、私たちを見ていた一人が聞いてきた。「これは飛ばないんだ」と私が答えると「それじゃあ、何の意味があるの?」と言われた。私たちが、無人機を投げてはキャッチ、を繰り返し始めると、周りから大きな笑い声が聞こえた。

 3か所目として高層ビルが立ち並ぶビジネス地区ラ・デファンス(La Defense)での撮影を終えた頃には、計3時間が経過していた。数百回の「発射」の後、私たちの使命は達成された。私の無人機は無傷だったが、ギーはそうとは言えなかった。服はひどく汚れていたし、肩も冷やす必要があった。(c)AFP/Dominique Faget


※この記事は、AFPのドミニク・ファジェ記者(パリ駐在)のコラムを翻訳したものです。