■「恐怖を振り払うために」軍事キャンプへ

 指定された取材席に着くと、反対側の席にはハマスとイザディン・アルカッサムの幹部たちが陣取っていた。そのなかには、 ハマスによるガザ政府の首相だったイスマイル・ハニヤ(Ismail Haniya)氏の姿もあった。私たちの周りは空席が目立ち、子供たちの「晴れ舞台」を見に来ている家族は数百人ほどしかいなかった。

 目の前でイザディン・アルカッサムの戦闘員に先導された軍事式のパレードが行われたかと思うと、突然、スタジアムは10代から20歳そこそこの少年たちでいっぱいになった。誇らしげに胸を突き出した彼らの肩を、イザディン・アルカッサムの戦闘員たちが次々とさすっていった。少年たちはこの日、新しく身に付けた技を披露し、誰が一番速く武器を解体して組み立て直せるかを競い合った。

 戦闘員がいくつもの輪に火を付けた。少年たちがその中を飛び抜けるのだ。私はスタジアム全体を見渡したが、救急車も消防車も待機している気配はなかった。式典全体を通じて、緊急事態が起きた場合への備えは目にしなかった。少年たちが炎に包まれた輪を次々と飛び抜けていく中、私は取材席のエリアから離れて少年の誰かと、訓練にあたった戦闘員に話を聞こうとした。ハマスの広報は手伝ってくれたが、イザディン・アルカッサムの戦闘員に制止された。彼は厳しく「インタビューは禁止されている」と私たちに告げた。後ろでは男性カメラマンが取材していたので納得できなかったが、考えを変えて許可する様子もない。

 私たちはスタジアムの違う場所へ行き、別の少年たちに話を聞くことができた。なぜこのキャンプに参加したのか──。「去年の夏に、僕のめいっ子がイスラエル人に殺されたんだ。今度は僕が彼らを殺す」と14歳のハテム君は答えた。15歳のモハメド・アブ・ハービド君は「(昨年の)戦争のときに怖かった」と語った。「だから抵抗運動に加わることにした。抵抗運動の人たちは決して怖がることがないから」

 彼らの年代にして、この少年たちはイスラエルとの戦争をすでに3回経験している。国連によると、直近の昨年の戦争では約500人の子供が犠牲になった。この地では誰もが、再び血が流れる日がやって来ると思っている。そのとき不屈の戦いを挑むのは、今日ここに集った若い「新兵」たちだろう。(c)AFP/Mai Yaghi


この記事は、パレスチナ自治区ガザ地区に拠点を置くMai Yaghi記者のコラムを翻訳したものです。