【3月8日 AFP】国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)は7日、イスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」が、ユネスコの世界遺産にも登録されているハトラ(Hatra)遺跡の破壊を始めたとして強く非難した。

 ハトラ遺跡はローマ時代の要塞都市で、現在はISの支配下にあるイラク北部モスル(Mosul)の南西約100キロの砂漠にある。約2200年前に造られた古代都市の遺跡で、東西の建築様式が混在する独自の遺構が非常によく保存されている。

 2日前の今月5日には、ISが古代アッシリアの都市ニムルド(Nimrud)の遺跡を重機で破壊し始めたことが明らかになったばかりだった。ISはその1週間前の先月26日に、モスルの博物館で貴重な古代の石像を破壊する様子を撮影した動画を公開していた。

 ユネスコのイリナ・ボコバ(Irina Bokova)事務局長は、「ハトラの破壊は、イラクでの戦争の下で文化財を一掃するというあきれた戦略が一つの転換点を迎えたことを示している」と述べた。

 もっとも、ユネスコとイラク政府はいずれも、ハトラ遺跡が破壊された具体的な日付や、具体的な破壊状況は明らかにしていない。

 ハトラ遺跡があるイラク北部ニナワ(Nineveh)州選出のモハメド・ヌーリ(Mohammed Nuri)議員は「ハトラは人里離れたところにあり、私自身は、ハトラで破壊が行われているのをはっきり見た人がいるとは聞いていない」と述べ、現時点でハトラ遺跡が破壊されたという確実な報告はないと述べた。(c)AFP/Jean Marc MOJON