【2月17日 AFP】中国の春節(旧正月)にみられる帰省ラッシュは、まるで民族大移動のような混雑ぶりだ。道路は大渋滞で、列車もすし詰め状態。だが、テクノロジーが帰省手段を見つける新しい方法を提供しているようだ。

 今年の春節は2月19日。当局によれば、28億人以上が帰省するという。最も利用が多いのは鉄道だ。切符売り場はいつも長蛇の列になるが、国営のネット予約サイト「12306.cn」のおかげで駅の混雑はましになった。しかし、ネットでも切符の予約は難しく、ユーザーのストレスは大きい。ソーシャルメディアで見かけるポスターには、ネット予約は「釣魚島(Diaoyu Islands)にアクセスするより難しい」と書かれている。釣魚島とは尖閣諸島(Senkaku Islands)の中国名だが、日中が領有権問題を争うこの島に到達するより大変だというのだ。

■ピーク時の売上は1秒間に1000枚

 だが、この戦いに新しい戦術も登場している。

 上海(Shanghai)から成都(Chengdu)まで距離にして2600キロ以上、39時間の旅の切符を入手できた27歳の会計士ケリー・ガンさんは「12306.cn.で空きが出たらすぐに予約できるように、ページを5秒ごとにリフレッシュするプログラムを使った。起きてから寝るまでほぼ1日中、このソフトを稼働させておいた」と語る。

 中国の列車の切符は、出発日の60日前にならないと購入できず、これが切符争奪戦に拍車をかけている。あらゆる切符は、発売開始から数分で売り切れてしまう。今年の帰省切符の購入が殺到したのは昨年12月19日で、12306.cn.では1秒間に1032枚を売った時間帯もあった。

 発売日の次に購入できる可能性が最も高いのは、出発日の15日前だ。予約取り消しの全額払い戻しが可能な最後の日にあたる。とりあえず切符を予約し、帰省手段を一つ確保してから、後でもっと良い手段を見つけて払い戻す人も多いからだ。上海駅では1月末時点で、1日7000枚の切符の払い戻しがあると報じられていた。

 ガンさんがキャンセルされた切符を確保するために使ったプログラムは、独立系デベロッパーが開発したオープンソースのものだが、中国の大手ネット企業も、こうしたニーズに応えようとしている。インターネット検索大手「百度(バイドゥ、Baidu)」は、予約して支払いを完了するまでに切符が売れてしまうことがないよう、予約プロセスを高速化したソフトウェアを開発した。同社によれば1800万人がこのソフトをインストールし、それを使って2800万枚の切符が購入されたという。

 一方、中国のウェブ・ブラウザー、猎豹(レーボ、LieBao)は、予約専用機能を提供している。発売日前に切符を選んで指定しておけば、発売開始とともに自動リクエストを送信する機能だ。

 平等が共産主義の原則のはずだが、春節の切符争奪戦の前にそんなものは存在しない。切符を求める人々は、ネットを駆使できる層と、貧しい出稼ぎ労働者に代表されるテクノロジーに疎い層に二極化している。

 北京(Beijing)で家政婦として働くグオ・デンシュウさんは、中国の経済成長期に地方から都市部へ出てきた何万人という出稼ぎ労働者の1人だ。ネットの使い方が分からないため、北京から1000キロ南にある故郷の安徽(Anhui)省へ帰省する切符を買うことができなかった。

「息子が立ち乗りの切符を買ってくれた。他の手段が見つからなかったら、15時間立ちっぱなしで帰るしかない」と彼女は言う。「春節っていうのは、家に帰るものだから!」(c)AFP