【1月21日 AFP】スイス国立銀行(中央銀行)が発表した対ユーロの上限撤廃に伴うフラン高騰の事態を受け、スイスの複数の高級時計メーカーらが、ユーロ圏で商品価格の最大7%値上げを検討しているという。ただし業界関係者は、緊急の事態ではないとしている。

 スイス・ジュネーブ(Geneva)で開催されている国際高級時計見本市「SIHHSalon International de la Haute Horlogerie)」に参加したブランドの関係者らは、フラン高騰に対しても強気の姿勢を貫きたいようだ。

 スイス国立銀行は15日、1ユーロ=1.20フランの対ユーロ上限を撤廃すると発表した。高級時計の約95%をユーロ圏や米ドル圏に輸出しているスイスの業界にとって、この決定に伴うフラン高騰の影響はことのほか大きい。「カルティエ(Cartier)」や「ピアジェ(Piaget)」など16のブランドを傘下に置くスイスの「リシュモン(Richemont)」は「適応する方法を見つける」とコメントした。

 新たな事態に合わせて時計メーカー各社が商品価格を変更すれば、ユーロ圏の国々では一夜にして価格が15~20%跳ね上がる可能性がある。ビッグブランドの幹部らはこの問題と、とらざるを得ない対応策について話すことを渋った。

 一方で中には、スイス近隣のユーロ圏諸国における5~7%の価格引き上げを示唆したブランドもある。ただ、どのブランドも今価格の引き上げを実行するのは時期尚早だと強調しており、しばらくは為替レートの様子を見守るとしている。

 価格引き上げが留保されれば「国際高級時計サロン」に参加した小売業者にとっては、今後の値上げに備えて多めに仕入れを行える機会となる。イタリアにある時計店のオーナー、ロッシ・ブルーナ氏は「フラン高騰は予期せぬ事態だったので、時計の仕入数を減らすかどうかについては、まだ決めかねている。最終的な価格を見て決める」と語った。

 アナリストは、今回の変更が限界利益に与える影響を考えると、ブランド側はユーロ価格で5%程度の値上げを実行するだろうとみている。スイスの民間銀行グループ「フォントーベル(Vontobel)」は「需要サイドに影響を与える。今年はスイス時計の輸出増加は期待できないだろう」とコメントした。

 一方匿名を条件に取材に応じた「リシュモン」の幹部は、自社グループはユーロ圏よりも影響の少ない米ドル圏での売り上げが大半を占めており、他社ほどには影響を受けないだろう、と話している。(c)AFP