火山噴火で炭化した古代巻物、X線で解読に期待 研究
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■10年以内に解読可能に
研究を率いたIMMの科学者、ビト・モセラ(Vito Mocella)氏は、AFPの取材に「正確な予測をするのは常に難しいことだが、リソースがあれば、巻物は今後10年以内に解読可能になるはずだ」と語った。
モセラ氏率いる研究チームは「X線位相差断層撮影法(X-ray phase-contrast tomography)」を用いて巻物を非侵襲的に調査した。X線の吸収度合いが物質によって異なるという特性を利用するこのスキャン技術は、医学分野で軟組織の画像を得るために使われている。
研究チームは、X線ビームからの信号を処理する目的で専用のアルゴリズムを作成、インクで記された文字と背景のパピルスとの差異を徐々に解明しようとした。
研究チームはまず、1986年に断片的に展開された巻物の一部を対象にして、最新技法のテストを実施。次のステップでは、はるかに難易度の高い対象へと移行した。長さ約20センチのソーセージのような形に丸まった、古いレース編みよりもろい巻物だ。
その結果、スキャン技術は、丸まった紙に書かれた文章のギリシャ文字24文字を全て抽出できた上、手書き文字の形の特徴まで特定することができた。これは、著者を特定する手掛かりになる可能性がある。
だが、語句を解読するまでには至らず、また巻物の奥の層まで調査を進めることも困難になった。
それでも論文の筆者らによると、今回の実験の目的は、最新技術が機能するが改良を必要とすることを示すための「概念実証」にすぎないという。
研究チームは、X線ビームの精度とアルゴリズムを改良することで、コントラストと文字の認識性能を向上させることができるはずと指摘し、「この技術は、『パピルス荘(Villa dei Papiri)』の書庫にあった、いまだ内容不明の多くの哲学的文書が、パピルスに全く損傷を与えずに解読される日が来るかもしれないとの期待を抱かせるものだ」と述べた。
このヘルクラネウムのパピルス荘については、「さらに深部にある未発掘」の階層に第2の書庫が存在するとの臆測もあるという。(c)AFP/Richard INGHAM