【12月18日 AFP】世界反ドーピング機関(WADA)は17日、中国・競泳男子の孫楊(Yang Sun、ソン・ヨウ)が、禁止薬物の使用で秘密裏に3か月の出場停止処分を科されていたことについて、上訴するつもりはないことを発表した。

 WADAは、五輪で2冠を達成した孫が5月に処分を受けていたにもかかわらず、11月まで公にされていなかったことについて、対応策を検討していた。

 WADAのベン・ニコルズ(Ben Nichols)氏は声明で、「中国の競泳選手である孫楊のケースを見直した結果、WADAは、中国水泳連盟(Chinese Swimming Federation)が決定した3か月の出場停止処分について、上訴はしないことにしました」と発表した。

「しかしながら、WADAは中国反ドーピング機関(CHINADA)に書面を送り、本件の公表が事後になったことに対する懸念を伝えました」

 ニコルズ氏は、その他の対応について何も明かしていない。

 世界ドーピング防止規程(WADA Code)は、禁止薬物の使用が確認された場合、20日以内に公表し、それに対する処分も、同期間内にWADAに報告されなければならないと定めている。

 CHINADAは、孫が広く知られている選手であるにもかかわらず、他の事例で手いっぱいだったことを理由に、報告が遅れたとしている。

 1500メートル自由形で世界記録を持つ孫は、5月の国内選手権で興奮剤「トリメタジジン(trimetazidine)」に陽性反応を示し、7月に3か月の出場停止処分を言い渡されたが、処分は5月17日にさかのぼって適用されていた。

 ドーピング違反に対する中国側の姿勢については議論が分かれ、孫は練習の拠点としていたオーストラリアから追放された。しかし中国側は、対応が間違っていなかったことを主張している。

 23歳の孫は、ドーピング違反を知らされた際「ショックで落ち込んでいる」とコメント。故意にトリメタジジンを摂取したわけではないとし、禁止薬物リストに追加されていたことを知らなかったと主張した。

 中国の期待の星である孫だが、プライベートでは問題が絶えず、問題児のレッテルを貼られている。

 2013年には、航空機の客室乗務員との交際を反対されたことについて、公衆の面前でコーチと大げんかする騒動を起こしたとして、商業活動の禁止と警告を受けた。

 その後、無免許でポルシェ(Porsche)を運転した孫は、バスとの接触事故を起こし警察に1週間拘留され、6か月の出場停止処分を受けている。(c)AFP